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2014年11月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年01月

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森史朗  「松本清張への召集令状」 (文春新書)

森史朗  「松本清張への召集令状」 (文春新書)
作者の体験やみたことをモチーフにしてできあがった作品が清張のなかにもたくさんあることを森のこの作品で知った。
 名作「遠い接近」の主人公山尾信治は清張を映している。山尾は30半ばを過ぎ、家族6人を養っている大黒柱。若者が彼の住む町にはたくさんいたのにも関わらず、戦争末期突然召集令状をもらう。彼のような年代のものには令状はこないのが普通なのに。戦争末期の令状はそのまま戦死に直結する。
 大黒柱を失った山尾一家はやむなく親戚をたどって広島に居を移す。そこで原爆にあい全員死ぬ。もし、令状がこなければこんな悲劇は起こりえなかった。朝鮮から帰還した山尾は、令状がどのようにだされたか追及をはじめる。
 赤紙は町に割当枚数がくる。それを役場の係員が適当に人選して決める。ここに恣意が働く。召集を忌避したい人間は、賄賂やいろいろ便宜を係員に働きかける。だから割を食う人間でる。係員の恣意により戦死する人間がでる。
 清張は32歳で召集される。一家6人を残して。そうか、山尾は清張なのか。そう思って読むとこれは本当に奥行のある作品となる。
 ところで清張の作品はタイトルと作品内容と結びつかないものが多々ある。「砂の器」は
その典型。連載を予定していた読売新聞から、宣伝をするからタイトルだけでも欲しいと
言われた清張。まだ何も作品の構想ができていない。「砂は指の間からこぼれる。はかなさ
切なさを表現している」。でなにを書いてもあてはまるタイトルとして「砂の器」でいくと
応えた。

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松本清張  「幻華」 (文春文庫)

松本清張  「幻華」 (文春文庫)
戦後8年で、銀座に高級会員制クラブ「ブルーボネー」をだした香津子。時代は移り、その「フリーボネー」からでた3人の女の店が今や隆盛。「ブルーボネー」には昔の面影はまったくなく閑古鳥の毎日。
 古い銀座を懐かしむ財界人二人が「ブルーボネー」30周年を祝う会を企画し実施する。招待客のほとんどは「ブルーボネー」からでた3人のママを取り囲む。香津子のところには誰も近寄らない。香津子の凋落ぶりを際立たせるだけの祝う会になってしまった。
 その現実は酒と涙をもってしてもぬぐえない。
でも世の中たいていは栄光など知らずに生涯を送る。だから、香津子は決して不幸せな人生だったわけではない。

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山田宗樹 「天使の代理人」(上)(下)(幻冬舎文庫)

山田宗樹 「天使の代理人」(上)(幻冬舎文庫)
山田宗樹 「天使の代理人」(下)(幻冬舎文庫)
昨年の出生数は107万人。で、わかっているだけで中絶した数は45万人。闇も含めれば60万人とも言われている。この物語にはいろんな人達が登場する。でも、心に最も迫ってくるのは川口弥生。弥生は銀行融資課に勤めている36才。20代の男性行員とつきあっているが結婚はしたくないし彼の子供はいらない。でも、妊娠出産できる年齢の限界にきている。そこでアメリカで超優秀なエリートの精子を精子バンクからとりよせ人工授精で妊娠する。そして、自らの子が、最高の頭を持って生まれ、最高の成功をかちとり優雅な生活を営むことを夢見る。
 20週目の検診時、子供が女の子であることを知り、夢が霧散したと思い衝撃を受け中絶を決意する。20週目を過ぎた中絶は、無理やり陣痛を起こし、分娩最中に胎児を圧迫死させる。
 中絶決断した夜、初めて胎児がおなかの中で暴れる。ここが圧巻。恐怖を伴って読者に襲いかかってくる。
 最近の小説は、いたずらに妊娠を登場させる。この作品はそんな一般作品とは断然異なり異彩を放つ。山田は何かに突き動かされこの小説を書いたのではと思わせる。
 分娩、中絶、出産、テレビ討論。すべてがリアルに眼前で展開する。男作家が書いたとは信じることができない。物凄く調査、勉強を積んだ末の作品。
 45万人のひとたちには是非読んで欲しい作品である。

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開高健 「白いページⅢ」(角川文庫)

開高健 「白いページⅢ」(角川文庫)
ふとんの上やふとんの中がすべての世界で暮らしたい。ごろんとしながら、本を読む。天井のしみの数を数える。眠くなったら眠る。トイレと飯が実に面倒くさい。
こんな理想的生活をしていたのがデカルト。「我思うゆえに我あり」はふとんの上で生まれた名言とこの本に書いてある。
 なるほど、その通りと思わず手をたたいた。

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湊かなえ  「白ゆき姫殺人事件」(集英社文庫)

湊かなえ  「白ゆき姫殺人事件」(集英社文庫)
男性、女性の性格、気質でどんな違いがあるかわからないが、この作品はなんとなく女性でなければ書けないような気がする。
 会社の同期入社で主人公の平凡な子美姫の同じ課に配属された絶世の美人三木典子が、執拗なくらいに美姫をいじめる。
 そして、美姫の恋人である笹山係長を典子が奪う。それでも、美姫には天才バイオリニストの憧れの雅也がアイドルとしている。ところが、典子はその雅也にも声をかけ恋人にしたように(実際は嘘だが)言い、美姫を奈落の底に落とす。
 そこからが凄い、典子は入手困難な雅也のコンサートチケット、しかも最前列のチケットを雅也から特別にもらっている。しかし、典子は用事があって行けないから譲ってあげると
言う。
 憎らしかったけど、雅也の魅力に勝てず、美姫はそれを購入する。ところがコンサート
前日になり、やはり恋人である自分が最前列にいないと雅也がショックを受けベストの演奏ができないから、あげたチケットを返せと。
 これ、全部典子が仕組んでいることだから、女性の執念、嫉妬は底が見えないくらい深い。

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福澤徹三  「侠飯」(文春文庫)

福澤徹三  「侠飯」(文春文庫)
色んなことがてんこ盛りで、結構楽しめる小説である。
逃亡しているヤクザが主人公良太のアパートに住みつく。このヤクザが不思議なやくざでやたら料理がうまい。料理だけでなく、掃除も隅から隅まで、掃き清める。
物語のなかで料理をヤクザが、レシピをしゃべりながら作るから、料理本みたいになっている。良太は三流大学の4年生。就職活動に必死に取り組んでいるが、全くかすりもしない。
 ヤクザが面白いことを言う。
「就職が内定したら、この部屋を出てってやる。」と。そこから少しアフォリズム的小説の面がちらつきだす。いろいろヤクザが、人生の生き方、仕事とはと、就職ができるための後押しをする。それでも、良太はなかなか就職できない。ヤクザの言葉がふるっている。
 「勉強もできないし、したくないのに大学にはいり、仕事もしたくないのに就職をしようとするからダメ。」結構耳が痛い言葉である。

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湊かなえ  「少女」(双葉文庫)

湊かなえ  「少女」(双葉文庫)
湊は最後が物語を作る前に浮かんだのだと思う。
あとは、そこに至るまでをどうつないでいくか。そこが、どうにもよくない。
由紀と敦子、牧瀬に詩織。名前は違うが、同じ人物にみえて仕方がない。でてくるおじさんや、おばあさんたちも同じ。だから、登場人物が何人もでてくるがみんな金太郎あめのように相違がない。
 とにかく読んでいて、由紀の章なのか、敦子の章なのか、混乱してくらくらすることがしばしばあった。
湊は、古今東西のホラー小説やミステリーを山のように読んで研究意欲も知識も豊富だと思う。だから、クライマックスをどうするかについてのバリエイションもたくさん持っているだろうし、閃きもある。
でも、人を知らない。名前の数だけ、人は違った個性がある。人を書ける作家になってほしい。

| 古本読書日記 | 06:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平  「羅針」 (文春文庫)

楡周平  「羅針」 (文春文庫)
円高を含め、グローバリゼーションの影響を、最初にもろに受けたのは、海運会社だったように思う。それは、国と国の間を結ぶ仕事だからである。かって船乗りは、漁業であれ、海上輸送であれ、仕事はきついが、一回日本の港をでて、半年くらい世界を回ってくると、家がたつくらいのお金がたまったと言われていた。しかし、国際競争にさらされ、特に海上輸送では、日本船員がどんどん姿を消し、今やすべて外国人船員のみで運行されるようになった。
  本作品はちょうど船員が、国際化の波にもまれはじめたころの、捕鯨遠洋漁業を扱っている。船員という職業のプライドに陰りがでる。そこでの家族、特に子供と父親の関係、
地方と東京の格差問題、船員が抱える将来の暗さなどが描かれる。
 楡は船の操作や、それぞれのチームの仕事、船上での暮らし、鯨の獲り方を微細に調査して、しっかりリアリティをもって描いている。
 ただ、問題をたくさん詰め込みすぎていて、物語の芯が何であるのかわからなくしまっている。
クライマックスである肝心のパックアイス上での脱出行が、力を込めて書いてはいるが残念ながら、もっともこの作品の中では切迫感がない。

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柴崎友香  「わたしがいなかった街で」(新潮文庫)

柴崎友香  「わたしがいなかった街で」(新潮文庫)
主人公砂羽のおじいさんは、広島で原爆の落とされた爆心地に近いホテルに勤めていたが、そのときはたまたま出張か何かででかけていて、原爆死にはならなかった。だから、砂羽の今がある。もし、おじいさんがホテルにいたら、今の砂羽はいなくて、また別の今がある。
 砂羽は戦争のニュース、ドキュメンタリーを録画もふくめてよくみる。戦場で次々兵隊が殺され屍が積みあがっていく。物体のように積みあがっていく。その物体があって今がある。
 今住んでいる場所、近くの散歩路でも、65年前には、空襲で倒れて人たちがいた。殆ど痕跡はないが、確かにいた。戦争や震災は起こったし、今でも起こっている。しかし、その街、その場所にいなければ常に傍観者だ。傍観者でも忘れていた震災のことをふと思い出すときがある。そう言えばあのとき、女に振られたなあと。これが傍観者である。
 砂羽は思う。今、ここにいて生きている不思議を。だけど、自分は単なる契約社員。中井という腐れ縁の男や、会社の後輩の加藤と合っては無駄話、無駄な行動をして日々をすごす。
 契約社員なんて、ちり芥のごとく捨てられ、今、何の役にたっているか、ちっともわからない。でも、生きている。
柴崎が面白い。今の在り様を語ることができる数少ない作家のひとりである。

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真山仁  「プライド」(新潮文庫)

真山仁  「プライド」(新潮文庫)
僕らの小さい頃は、食べ物が腐って食べられないかどうかは、嗅覚がそのころは今より発達していた人ばかりだったのか、皆、匂いを嗅いで判断していた。それで、食べ物の安全が守られていた。まだ、食べられるのに、今みたいに、基準に従ってsそこからはずれた食べ物がばさばさゴミとして捨てられることはなかった。
 賞味期限切れにはまだ至っていないと言っても、最近は食品を扱っている業者が嘘のレッテルを平気で貼り付けているということがまかり通っている。
 型通り、マニュアル通りやっているから、我々には問題責任は無いという言い訳より、食品現場では、人間が嗅覚でもって、問題有無を判断したほうが信頼できる食品ができるのかもしれない。

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伊集院静   「白い声」(上)(下)(新潮文庫)

伊集院静   「白い声」(上)(新潮文庫)
伊集院静   「白い声」(下)(新潮文庫)
フランスからピレネー山脈をこえて、聖ヤコブの遺骸が祭られているとされる、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼路は、「ローマ」「エルサレム」と並ぶ世界3大巡礼路として有名である。
 伊集院は、過去5回この巡礼路を訪ね、何が何でもこの巡礼路を舞台の小説を書きたいと思っていた。筆に力がこもっている作品になっている。
 それにしても破滅型作家と18歳の玲奈のとりあわせがどうにもしっくりこない。巡礼の旅に至る過程に無理がある。そんなしっくりこない中で、クライマックスの巡礼の旅となるのだが、これが線になっていなくて、ポツン、ポツンと街だけが表現され、巡礼路にならない。少しも、ピュアでスピリチュアルな雰囲気が発露されていない。
 伊集院が筆に力をこめればこめるほど、場面は空回りだけが続く。
残念な作品である。

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川上未映子  「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)

川上未映子  「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)
シンデレラ姫、家なき子、マッチ売りの少女でもいい。貧乏で、いじめられていて、これ以上かわいそうな女の子はいないという子を作り上げる。さらに、その子の心はきれい、よくみると瞳には星がいつも輝いていて可愛らしい。でも、かわいそうな子。
 時々、女性作家で、こんなヒロインを作り上げ、物語を作る作家がいる。書いているうちに、ヒロインに気持ちが乗り移り、これでもかというくらいストイックなヒロインをつくる。
 この物語の主人公入江、ひょっとすると川上の経験をスタートに描いているかもしれないが、あまりにも現実からとびでて、悲劇のヒロインを作り上げすぎた。
 それにより三束との会話も、石川との会話、交際も全くリアリティのないものになってしまった。
 作家は広く深いキャパシティを有していないと行き詰まる。こんな作品を描いているようだと、将来は暗いように感じる。

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伊集院静  「悩むが花」(文春文庫)

伊集院静  「悩むが花」(文春文庫)
最近は流行らない人生相談に伊集院が答える。
ある主婦が、だんなの携帯をこっそり見ると、毎日女性と食事に行ったりデートをしている。
主人の帰りはほぼいつも午前さま。
 間違いなく主人は浮気をしている。こんな主人に嫉妬を感じる。浮気など許さない。
どうやって対処したらいいの。
 なんて質問がある。
伊集院は一言。
 「それは浮気ではありません。本気です。」

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伊集院静  「あなたに似たゴルファーたち」(文春文庫)

伊集院静  「あなたに似たゴルファーたち」(文春文庫)
今はどうなのだろうか。一時期異常にゴルフがブームになった。
猫も杓子もゴルフをやっていた。
ゴルフをやらない人間は、社員として認められなかったし、取引先からも敬遠された。
会社で出世するか、しないか、個人の評価はゴルフをするかしないかが出発点で、ゴルフをしない社員は評価以前にX点であった。
ゴルフやテニスは年老いてからもやれるし、野球のように多人数を必要としないから、結構仲間意識が強固になり、その仲間たちは生涯にわたって友達なる可能性が強い。
 コンペのある前夜は、1ホールごとにどう攻めるかを思い描く。興奮して眠れない。眠らねばと思い、羊を数えるがごとく、1バーディ、2バーディと数えはじめ、18バーディで
よし、だんとつで明日は優勝だと叫び、更に眠れなくなる。

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伊集院静   「アフリカの王」(上)(下)(講談社文庫)

伊集院静   「アフリカの王」(上)(講談社文庫)
伊集院静   「アフリカの王」(下)(講談社文庫)
マサイマラなるアフリカの平原の小高い丘、オロロロロの丘にホテルロッジを建設する黒田十三という主人公の格闘物語。
 黒田が出版社の編集部員を首になるまでと、最後の嵐のなかでの、ツルハシを一人で振り、懸命にロッジの土台を支えている場面は、迫力があった。でも、その間の物語は色んな人々が登場して人生の教訓をのべるくだりが多く物語が硬直してしまっている。また、競馬の場面が多々でてくるが、これがアフリカにロッジをたてると言う物語とあまり共鳴していない。伊集院だったら、空想を膨らまし、もっとドラマティックに描けるはずなのにと思って読み切る。
 で、最後にあとがきを読んで、その謎がとけた。
この物語は、実際の出来事をあつかっており、ムパタロッジは現実にケニアで営業していることを知った。空想ではなかったのだ、この物語は。

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石坂洋次郎  「丘は花ざかり」(新潮文庫)

石坂洋次郎  「丘は花ざかり」(新潮文庫)
久しぶりに石坂の本を手に取りよみだしたころは面白く新鮮だったが、乱歩と同じで流石に飽きた。石坂はこの作品もそうだが、戦後の青春、男女関係について、性を軸におき、頭と口ばっかりで旧概念と戦っているばかりで全く実態は旧体質と変わらない若者たちを、場面をかえながら作品にしている。
 初期のころはともかく、一躍売れっ子作家の仲間入りをしたら、石坂は若者たちとの交わりはなくなり、贅沢な生活に溺れ、一流料亭と銀座クラブを放浪、小説の中身と自らの暮らしが完全に分断してしまった。
 だから、若者行動の変化には無関心、いつも同じパターン、頭の中だけで描いた青春物語しか書けなくなった。本当にどれもこれも、登場人物の名前だけが違っているだけで、ストーリーは殆ど一緒。安でのテレビドラマを繰り返し見されられている雰囲気になる。やっぱり、昭和30年代超売れっ子作家であっても今全く読まれなくなってしまった作家であることがよくわかる。

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伊集院静  「プレセント」(小学館文庫)

伊集院静  「プレセント」(小学館文庫)
今は大学までいく人が殆どで、大学までいけばたいていはどこかに就職する。
就職した会社で、長く続く人もいれば、合わなくてすぐやめて、その後、色んな会社を転々としたり、フリーターみたいになって凌いだり、一念発起して、職人や料理の道にはいり
独立していく人もいる。
 ギャンブル、酒飲み、放浪旅を繰り返し、それをネタにして、小説やエッセイを書いて大成功をしている伊集院も最初はちゃんと会社に就職している。
 会社で上手くいかない。ダメ社員の烙印を押されてしまう、そんなとき、ある先輩に誘われ飲みにゆき、しこたま飲んで最後は先輩の家にて轟沈。朝、先輩に起こされ荒川沿いの土手に連れてかれる。
 遠く上流からレガッタをやっているボートがやってくる。
先輩はなつかしそうにそれを見つめている。「どこまで行くのですか」と聞くと、「今日は遠征の日だから、東京湾まででて、それから一旦陸にあがり、利根川の上流までいくんだ」と。
 「もう苦しくて、倒れて死にそうになる。でも倒れたらレガッタにならない。だから、なにがあっても漕ぎ続けなければならない。でも、その鋭い山をこえたらもう倒れそうに
なることはなくなる。」
 会社に入って、そこをやめて、別の道を歩んでも、最初に入った会社でのことは忘れることができない。

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伊集院静  「旅行鞄にはなびら」(文春文庫)

伊集院静  「旅行鞄にはなびら」(文春文庫)
伊集院のお父さんは、10代半ばに、韓国から日本にわたってきて、地をはうように働いて、才覚もあり財を成した人のようだ。伊集院には、弟がいたが、17歳のときに海で溺死してしまった。それで、男の子は伊集院だけになり、お父さんは伊集院に家を継いでくれることを期待していた。お父さんは家を空けることが多く、たまたま家に帰ってきても、伊集院と会話することはなかった。
 そんなお父さんが唯一伊集院と話をしたのが、伊集院が家をでて東京の大学に行く前の晩。お父さんが半生を語ってくれたときだった。伊集院の家にはお父さんが苦労しながら流浪していたときに使っていたでかい革の鞄があった。
 父が半生を語ったあとに、伊集院はお父さんに、使い古された鞄を東京に持っていきたいと願いだし、お父さんの許可をもらった。それから3年後、伊集院が家を継がないと決意して、お父さんとは最悪の関係になってしまった。だから、使えなくなったお父さんの鞄をごみ捨て場に捨てた。未練もなかった。
 そして今伊集院は、ある飛行場にいる。伊集院の鞄には、飛行機会社やホテルのラベルが山のようにはりつけられていた。それを見た人が近くにやってきて
 「たくさん旅行をなされていますね。」と言う。
伊集院は「本当に旅をたくさんしたものだ」と思う。そして鞄をながめ
 「この鞄もまだまだ旅の途中だ」とつぶやく。

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五十嵐貴久  「誘拐」(双葉文庫)

五十嵐貴久  「誘拐」(双葉文庫)
今まで読んだ五十嵐の作品の中では、最も優れて作品だと思った。
テーマは、この世には金よりも大切なものがあるということだ。それは、人間の矜持、誇りである。札束をどれほど積み上げてひっぱたいてみても、譲れないことがある。
 終盤、誘拐された百合が解放され、犯人からの身代金の放棄があり、大きな誘拐事件は何の被害もなく終了した。しかし、何の目的で犯人はこの事件を引き起こし、そして誰が犯人なのか。その犯人を追いつめてゆく物語終盤の星野警部補佐の執念は読み応え十分である。
 更に、携帯、メールなど文明機器を全く使わず、一昔前のアナログの方法で、誘拐、脅迫を進め、そこに全く瑕疵がない方法の展開、さすが五十嵐だと感心した。見事な逆手張りだ。
 しかし、終盤の緊張した展開までが長すぎる。同じことを、繰り返しをする。くどすぎることと構成がもう一歩のところが残念である。

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石坂洋次郎  「雨の中に消えて」(新潮文庫)

石坂洋次郎  「雨の中に消えて」(新潮文庫)
昭和30年代の作品である。このころ、政治家や大会社の社長、重役は大きな邸宅に住み、芸者遊びを頻繁にして、別宅を持ち、2号、3号の妾を持っていることが当たり前の時代だった。それで、妻が嫉妬したり、離婚になったりすることは無かった。むしろ、嫉妬や愛の苦しみに悩んでいたのは、こうした雲の上で生活している人たちではなく、雲の下の人々であった。
 ここに登場する、雲の上の生活をしている政治家樺山、選挙時には、事務所に大きな金庫を持ち、札束をあっけらかんとばらまく。
 今は買収のはびこることを良からぬこととして、政治家を一人当たり億の税金を使って養うようにした。それで、業界や団体との癒着や利権が無くなったかと言えば全くそんなことは無い。形だけの、いい加減な政治資金報告書を作って、糊塗としている。その不正をつかれると、いけしゃあしゃあと後から修正して、何にもとがめられない。構造だけ変わらず
裏金をばかばか稼ぎ、更に税金からも金を奪い取っている。
 何だか昔の政治家のほうが、公明正大で、清潔に見えてくる。

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伊集院静  「冬のはなびら」(文春文庫)

伊集院静  「冬のはなびら」(文春文庫)
自分の人生の恩人、すべてを支えてくれ、現在でも心の支えになっている人がいる。
そんな人が亡くなったとき、その人の死をいちはやく知りたいだろうか。
この作品は、支える人と支られている人がいて、手紙の交信を欠かさずしている。支える人が亡くなる際に、妻をよんで、「自分が死んでも、死んだことを彼に伝えるな」と言う。
 妻は、「でも手紙がくれば返信せねばならない」と答える。「お前が、俺の字をまねて返信しろ。」と・・・・。
 妻は懸命に夫の字をまねて返信を書き続ける。もし亡くなったことを知らせると、支えられた人が長い年月をかけやりとげようとしていることを投げ出してしまうかもしれないから。
 そして、今、成し遂げた報告のため、支えられた人が亡き夫に会いにくる。待ち受ける妻。
支えられた人は、夫が亡くなったことを知ってなぜ教えてくれなかったのだと怒るだろうか。絶対怒らない。
 人間を優しく、おおらかに、深くみつめる眼を持っていないと書けない作品である。

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五十嵐貴久  「パパ ママ ムスメの10日間」(幻冬舎文庫)

五十嵐貴久  「パパ ママ ムスメの10日間」(幻冬舎文庫)
自分と他人がいれかわってしまうというよくあるパターンの小説。
しかも、この小説は、娘が父に、父が母に、母が娘にと3人が転移するという欲張り作品となっている。
 父の主婦業、母の学生生活は、エピソード的に描かれ、主人公小梅が父に代わって会社員になり、会社の出世頭、ワンマンで力のある役員桜木の不正を明らかにしながら、会社とって最も大切なことは何であるかを問いかけることが物語のテーマとなっている。
 室田という研究所の部長がいる。彼は桜木が主導する開発商品に、中国から輸入されている毒菜が材料として使われていることを知っている。しかし、もう50歳であるし、支えるべき家庭もあるので、桜木に強圧的に指示され、事なかれにはしる。
 それを、主人公で父になってしまっている小梅や、父の部下である一見するとダメ社員、それに母に変わっている父まで登場し、室田の背中をおし、告発するところまで持っていく。
 会社員の前に必要なことは勇気である。しかし、現実は物語のようにはいかない。勇気などという恰好いい言葉に踊らされ行動を起こすとあまりいい結果はでない。

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石持浅海  「ガーディアン」(光文社文庫)

石持浅海  「ガーディアン」(光文社文庫)
精神的に落ち込んで、厭世的になり、自殺したいと思っている人がいる。しかし、自殺をする勇気がない。でも、もう死にたい。
 そんな時に彼は一人の不思議な女性と仕事を一緒にすることになる。そしてある時とんでもない現象に遭遇する。その女性と一緒の電車に乗っているとき、女性が痴漢に襲われる。その手が女性のスカートに忍び込んだ瞬間、痴漢の指が手の甲と反対にそりかえりポキポキ折れてしまったのである。
 その後、たびたび誰かがその女性を襲われるたびに、襲おうとした人間が大けがをするか、亡くなってしまう。そこで自殺願望の男は考える。彼が彼女を死ぬ気で襲おうとすれば、自分は自然に殺されてしまう。
 これは楽に死ねる。ただ、もう一つ、そんな超常現象がこの世に存在するのか確信がもてない。それで、同僚をたきつけ、彼女を襲わせる。すると彼女は大けがをする。
 男は確信をもって、その女性を殺そうと襲いかかる。

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ニック ホーンビィ 「ハイ フィデリティ」(新潮文庫)

ニック ホーンビィ 「ハイ フィデリティ」(新潮文庫)
人生の上で絶対やってはいけないこと。
a恋人とわかれ、b大学をやめ cレコードショップで働きはじめ dその後レコードショップでずっと働き続ける 主人公ロブが歩んできた道。
かっこよいつもりで大学をやめ、かっこよいつもりで凝ったレコードショップを開き働く。
夢のような生活が待っているはずだった。気が付けば10年以上同じ暮らしを続け、今でも変わらずレコードショップで働いている。もう少しで36才になるというのに。
 学生時代、最先端の服装で最先端の音楽に狂っていた仲間は、大学を卒業して確固たる社会人の道を歩む。そんな連中と昔のように遊んでも、会話の中味がわからない。だれもレコードの話題なんかしやしない。遊びや仕事でみんな海外に行ったことがある。ロブは海外どころか北ロンドンを毎日歩き回っていただけ。飲んだ最後はみんなタクシーで帰るが、そんな金がないから深夜定期バスを暗い停留所で待つ。
 10数年仲間は変わったのに、ロブだけが全く変わらずこれからも変わりそうもない。
だから恋人ローラにしがみつく。ローラ、青春時代クラブで知り合った同じ仲間のなかにいた
。でも、今は弁護士。全然違う世界に生きている。それであっても、ローラは失えない。だってローラを失ったらもう恋はないだろう。そうすると、ずっと死ぬまでたった一人で過ごさねばならないから。
 ローラのロブへの言葉が厳しすぎる。
「あなたは昔とまったく同じひとよ。靴下だって何年もたてばあなたより変わるわ。」

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恩田陸  「劫尽童女」(光文社文庫)

恩田陸  「劫尽童女」(光文社文庫)
私が子供の頃、子供たちの任期を2分した漫画があった。
一つはかの有名な「鉄腕アトム」。もうひとつが「鉄人28号」。
どちらもロボットであるが、この2つのロボットには大きな違いがあった。
アトムは人間としての考える頭脳や、感性、感情を有していて、自らの判断で鼓動ができるが、28号は、リモコンで操作される機械の機能しかなかった。
 この作品に登場する遙は、アトムに酷似している。
遙を創造した、伊勢崎博士は「鉄腕アトム」では、お茶の水博士に相当する。
この作品には、遥とともに姿は見えないが活躍するトオルという遙と同じ特殊能力を持つ人物が登場している。
 このトオルが小説の後半で、声は少年だが、実は年老いた伊勢崎博士だったといことが明かされる。少し、アトム世代としては、夢が萎んだ。
 遥と同じように活躍する、トオルは純真な少年であって欲しかった。

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松本清張  「象の白い脚」 (文春文庫)

松本清張  「象の白い脚」 (文春文庫)
ベトナム戦争は誰も知らないものはいないが、ベトナム戦争終結少し前から行われたラオスのベトナムと同様な戦争についてはほとんど知られていない。
 アメリカはベトナムが共産化し、インドシナのとりでとしてラオスの共産化を防ぐことに懸命になった。中国やソ連が支援しているとされていたパテトラオという共産軍ゲリラがラオス北部を制圧虎視眈眈と首都ビエンチャン攻略を狙っていた。
 ところがこの内戦は全く不思議な内戦だった。
この内戦にアメリカは6万人の軍隊を派遣したことになっているが、実際は500人程度だった。どうしてこんなことになるのか。6万人の軍人手当なる税金をラオス及びアメリカの高級軍人、官僚、政治家及びアメリカが敵視し戦っていたとされるパテトラオに配るためだった。アメリカの海外援助額はラオスが南ベトナムより多かった。
 アメリカ軍、ラオス政府軍、共産軍が、アメリカのお金に群がって癒着している。こんなわけだからまともな戦争をするわけがない。マスコミは危険だからということで紛争地域に立ちいることを許されず、ときどき軍幹部が紛争地域からでてきて、今日は大きな戦闘があり、何人もが亡くなった、と嘘の報告をする。マスコミはそれを鵜呑みにしてラオス内戦激化という大きなニュースを世界中に流す。
 すると更にアメリカは援助という名目のお金を増加する。
 戦争、内紛がこれでは収まるわけがない。
ハードボイルドなどと称して、現実とはかけ離れた小説が多い昨今、清張のような真実を
追及して、それを読者に提示する作家が求められている。

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恩田陸  「中庭の出来事」(新潮文庫)

恩田陸  「中庭の出来事」(新潮文庫)
これは読むことが苦痛をおぼえる作品である。読みだしたら一気に読まないと、時間をおいて続きを読むと何が何だかわからなくなってしまう。しかも、集中力を持ち、それを持続しないと頭が混乱する。
 劇中劇が続く。今読んでいる部分が、劇で行われているのか、劇にみせかけ現実の物語が行われているのかわからなくなり混乱する。劇と劇の筋に従った現実の物語が合わせ鏡のようになって進行し、それが最後に統一される。
 この作品を読み、現実を、距離をおいて見直すと、現実もこの物語と同じようなことがおこなわれていることに気付く。特に会社では。
 本音を言えば、こう語らねばならないし、こう行わねばならない。しかし、協調、チームワーク、出世を考えればそんなことをしてはならず、本音とは異なることを唯唯諾諾として行ったり行動したりする。舞台の役者と同じように演技をしている。演技の上手な役者ほど出世して偉くなり、演技を忘れて本音で行動すると、人生の舞台からおちてしまう。
 本音で行動することと、演技でおこなうことが合わせ鏡になり人生の舞台は死ぬまで続く。

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石坂洋次郎  「霧の中の少女」(新潮文庫)

石坂洋次郎  「霧の中の少女」(新潮文庫)
石坂の小説が全盛だった、昭和20年代から30年代にかけては、街や村には子供たちや青年男女が溢れていた。貧乏人が多かったし、交通網も発達していなくて、遠くへでかけることもまれで、人々は村や街のなかで支えあって生きていた。
 もらい湯というのがあり、お風呂のある家に入浴させてもらいにゆくことは普通だった。家族がぞろぞろ行ってバラバラ入浴するのは、お風呂を貸してもらう家に失礼だから、家族はそれが高校生であろうが、父母であろうが、男女が一緒になって風呂にはいることは当たり前であった。村の旅行でも、当時の温泉は混浴が多く、男女区別なく、皆一緒にお風呂にはいる。それが恥ずかしいものではなかった。
 この小説のように、青年男女が体の構造をお互いに見せることは結構一般的で、それで性問題になることはなかった。しかし、結婚前の性交渉や接吻は通念上あってはならない。互いの裸は知って、大分たってから性交渉がなされていたのである。

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恩田陸  「まひるの月を追いかけて」(文春文庫)

恩田陸  「まひるの月を追いかけて」(文春文庫)
今までの自分を忘れる。今の自分を変えるのだ。そんな思いで旅に出る。遠くへ引っ越す。
この小説のように出家までしようとする。それで「吹っ切れた」となるか。
 これは難しい。今までや、今の自分をどこかへ置いておくわけにはいかない。どこへ行っても今の自分を引き連れていくことになるのだから。一時変わったように思えるが、しばらくするとあれほどいやだった自分に戻ってしまっている。
 どうも色んな本を読みすぎているかもしれない。この作品、母親が異なる異母兄妹が中心の話。こういう作品で安直なものは、兄妹が泥沼の恋に陥る。この作品は兄と妹の母が恋に陥る。このことが明かされずミステリータッチに物語が進行する。しかし、兄だけが写っている旅館の一室の写真が昔の兄の恋人に送られてきて、これが兄の恋人が写した写真であるというところで、兄の恋人は妹の母ではないかと思ってしまう。このことが、物語の早い段階で描かれる。
 そうすると、ミステリー感が失せてしまう。たくさんの本を読んでいると、ときどきこういう自分自身の閃きにであう。興味を半減させないために、読書量を減らさねばならない。

| 古本読書日記 | 06:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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石坂洋次郎  「りんごの花咲くころ」(角川文庫)

石坂洋次郎  「りんごの花咲くころ」(角川文庫)
昔、キャリア官僚でそこそこの地位のあるかた人と仕事上でのパーティでであった。名刺を差し出すと、首を横にふる。するとお付きの秘書が私の名刺をとり、官僚にかわって官僚の名刺を私にさしだした。唖然、別世界に生きている人だと思った。身を粉にして働いているのかもしれないが、とても大衆庶民を慮り仕事をしているとは思えなかった。彼には、庶民大衆などというのは下等動物で眼中にすらないのではと思った。
 この短編集にある「ある貞妻の話」には戦時中田舎に講演にくる刀尾閣下という男がでてくる。閣下というからそれなりの身分の人であろう。
 この閣下は、自分はこう扱わられねばならないという固定したイメージがある。
出迎えは誰がして、出迎えの車はどれほどのもが適当か、夜は高級料亭できれいどころをいれて接待をしてもらい、隣部屋には2人分の布団がしつらえてある。さらに、下手くそな字を和紙に揮毫してあげる。
 こんなイメージが少しでも崩れた対応を村の役人がすると、プスっと横を向き、ふてくされる。村人は困惑しながら、機嫌をとりなすよう懸命に努力する。
 こんな閣下が時局講演で時に涙を落としながら、真に迫った演技で、前線の兵隊さんは喰うや喰わずで戦っている、皆も兵隊さんの苦労に思いを馳せ、ぜいたくなどしてはならない。
村の役人は閣下の大柄なふるまいと講演内容のものすごい落差に驚嘆し、閣下と自分たちは同じ人間、生物ではないと心底思っただろう。

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