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2014年07月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年09月

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吉行淳之介 「男と女の子」 (中公文庫)

吉行淳之介 「男と女の子」 (中公文庫)
吉行は、喘息発作と皮膚炎、それに眼病に一生涯悩まされ続けた。
その中で、喘息と皮膚炎の原因について吉行は心因性のものだと思っていて、何か事件に遭遇したり、環境が突然変化したときに発症すると思い込んでいた。
そこで変な妄想が起きる。
 皮膚炎に苦しんでいるあるアパートの住人がいる。そこを通りかかる主人公に、色々なことを仕掛けてびっくりさせ、皮膚炎を移そうとする。主人公はそんなばかなことできるわけは無いと思っているし、事実彼の皮膚炎は全く主人公には移らない。
 てんぷら屋に田舎出の15歳くらいの女店員がいる。どこにでもいる普通の娘だ。この娘歌が上手でテレビののど自慢で優勝し、歌手としてデビューをする。娘は眼や鼻を整形する。売れっ子となった娘が主人公と再会する。お互いに愛があるわけではないが、愛を交歓する。主人公に苦い悔恨がにじみ出る。これでもう会わないねと娘が「さようなら」といい
去って行った途端、主人公の肌がむくむくと腫れ上がってくる。

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吉行淳之介  「春夏秋冬女は怖い」(光文社文庫)

吉行淳之介  「春夏秋冬女は怖い」(光文社文庫)
聞き上手の吉村が、見聞した主に作家たちが、彼らの女性関係でほとほと参ったエピソード満載の愉快なエッセイ。作品の最後のほうは、子宮論となり、私が経験不足のせいか、分らない部分も多く、内容も文章も少し雑になる。
 吉村も経験があるようだが、ヒステリー症状の見知らぬ女性が突然やってきて、愛していると宣言、その後どこにもついてくる。遠く離れたところに転居しても、動物的感かどうかしらないが必ず探し当てやってくる。
 そんな丹羽文雄、広津和郎のエピソードは笑える。でも当人は全く大変だったろう。
聞いたこともないテスカという哲学者が女性について極め付けの言葉を残す。
「男は繊細で、女は獰猛である。とても、男の歯のたつ相手ではない。病院の手術室を見給え。メスを持って細かい作業を続けているのは男で、だらだら流れる血を平然と拭っているのは女ではないか。であるからして、戦争のときにも心優しい男は銃後を守り、勇猛果敢な女が前線に行って戦えばよいのである。」

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朝日新聞とヘイトスピーチ

今朝(8月30日)の朝日新聞の一面トップ記事にはまたまた強い違和感を感じた。国連人種差別撤廃委員会が日本のヘイトスピーチ活動について日本政府にたいし毅然と対処し、法律規制をするよう勧告したという記事である。
 もちろんヘイトスピーチはいけないことだし、必要に応じて規制対応も必要なのかもしれないことは理解できる。違和感を感じるのは、朝日新聞は現在のヘイトスピーチデモの現状を問題視して継続的に報道してきたとは思えないのに突然とどでかい扱いの記事の登場だからである。
もちろん朝日がヘイトスピーチ問題を記事にしたことがあることは知っている。しかし、それは虫眼鏡で探さねばわからないほど小さく、報道回数もほんの数回。
 それが国連という権威者が規制勧告したとなると、今まで朝日は大いに問題とヘイトスピーチをひっきりなしに提起してきたといわんばかりのどでかい扱いの記事。
 戦前朝日は軍や政府の片棒をかついで、人々を戦争へと戦争へと駆り立てていった。一見いつも権威権力に立ち向かっているように装っているが、ふと気が付くと、権威権力の傘によりかかり威張り散らしている姿に簡単に豹変してしまう。 朝日はそんな体質を持っていると、ヘイトスピーチ記事を読んで思ってしまう。
 ついでにこの記事で朝日はちゃんと、国連委員会は従軍慰安婦問題に対しても日本政府に誠実に対応することを求めているとさらっと書いている。

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吉行淳之介  「娼婦の部屋 不意の出来事」(新潮文庫)

吉行淳之介  「娼婦の部屋 不意の出来事」(新潮文庫)
場末のバーで知り合った雪子と主人公は関係を結んでいる。この雪子には独特な何ともいえない匂いがある。どうも、隣家の学生たちが何かビーカーで実験しているときにでる香りが雪子の家や雪子に沁みついているようだ。ここが最後の物語のオチにつながる。
 雪子には増田というヤクザのヒモがいる。暴力を振るわれるのか雪子の体には傷の後がたえない。その増田に主人公と雪子の関係がばれた。増田は主人公を強請りに、主人公の勤める出版社に来る。どんな恐ろしいやくざが来ると思ったら、体も小さくおどおどしている弱そうな男。増田も主人公の貧相な出版社の社屋をみて、とても主人公を強請れないと思い、強請をやめると言う。ここからがおかしいのだが、主人公が「なぜ強請をやめる。強請るべきだ。俺に金のあてがある。」と逆に増田に詰め寄る。今の金で4-500万円は一週間もすれば用意できると主人公が言う。
 主人公は以前インタビューをしたことがあり、スキャンダルを知っている女優を強請ることにする。女優の指示で、帝国ホテルのロビーで会う。
 強請る場所帝国ホテルは貧乏人には縁がないところであり、女優も売れっ子で一流俳優。強請るとは言ってはみたもののだんだん主人公は怖じ気つく。それを払しょくするため、大盛りネギをトッピングしたラーメンを食べた後、ホテルにゆき強請にはいる。
 「スキャンダルをばらす」と言った時、女優が鼻から眉にむけ少し顔をしかめる。でも、それは強請の効力ではなく、ネギの匂いが顔をゆがめたことを主人公は知る。
 女優が言う。「いくらで、かたをつけてくれるの。」主人公が思わず言う。「2万円だ」と。
いいなあこの「不意の出来事」という物語。

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吉行淳之介  「湿った空乾いた空」(新潮文庫)

吉行淳之介  「湿った空乾いた空」(新潮文庫)
 海外に行こうなんて思ったことが無かったが、同居している女優にそそのかされて重い腰をあげ、アメリカ、ヨーロッパへと長い旅に主人公はでかけた。海外どころか近所にでるのも億劫なぐうたら人生をおくっていたことも要因であるが、何よりも常に病身の身であったことが最大の要因であった。
 面白いのは、アメリカ ラスベガスに到着した途端、しつこくこびりついていた皮膚炎が嘘のように消失するのである。
 しかし、女優との旅行は、ほとんどが喧嘩に終始する。それは、旅にでる前の日常の繰り返しでもある。女優が妻と別れて籍をいれろと責める、主人公は、それはできないと繰り返す。飛行機のなかでも、ホテルでも、観光地でも。
 主人公の姿、言動からはとても女優を愛しているようには思えない。どうして、こんな口うるさい女性と8年間も暮らしているのだろうとの思いが読んでいて頭から離れない。
 そして最後の訪問地パリで女優は一足先に日本に帰る。残り一週間晴れて主人公はしつこい女優から解放されパリを満喫しようとする。印象派美術館にいそいそでかける。
 そこで、どうして? 海外ではでないはずであった発作に襲われ前のめりに倒れる。

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萩原浩  「幸せになる百通りの方法」(文春文庫)

萩原浩  「幸せになる百通りの方法」(文春文庫)
萩原浩は1956年生まれ。村上龍は1952年生まれ。4年しか違わないのに持っている心情が全く異なる。
 村上龍は作品の中心にいつも自分がいる。主張にしても、悩んでみせるにしても、大袈裟なポーズをとり周りに人を従える。
 萩原は、自分をまずは消して、ありのままの社会を書く。そこに、さらさらと自分の想いを粉のようにふりまく。そのために、深く広く世の中を研究、調査している。だから、実に市井の生活や現代の社会事情に詳しい。
 ノルマの表の前でマジックインキを手に取り、実は書き足すことができず、昨日までの棒グラフの上辺を縁取っている
 なんて表現は本当に現実の販売現場をうまく捉えている。
「ひととおなじことはやりたくない。」「自分が生かせる仕事をしたい。」こんな甘っちょろいことばかり言っている息子をどやしつける。
 「まずは社会に飛び込んで、実務や社会を我慢しながら経験して、それから自分を活かせる仕事をみつけるのだ。」
 そんな自信いっぱいで、偉そうに説教する父親が、不満を抑え我慢をしながら勤めた会社から、50歳でいらない人となりリストラされ解雇されてしまっている。

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吉行淳之介  「恋愛論」(角川文庫)

吉行淳之介  「恋愛論」(角川文庫)
吉行の魅力は、ちょっぴり社会を斜めにみながら、飄々と過ごし、世を渡っていくところである。遠藤周作ばりに、生き方指南役と自ら称して、恋愛とは何か、青春とは何かと論じるようなことは全くしないのが流儀だ。だから、よくぞ、このような本を書いたものだと驚く。流石にあとがきで懲りたのか二度とこのような本は書かないと吉行自身が述べている。
 それでも吉行流のウィットが満載な作品である。
昔人間は頭が2つ、手足が4本ある動物だった。神様がそれは不便だろうとそれぞれ2等分して今のような人間にした。そして、男と女ができた。その2等分された、男と女が寂しくなり、分離されたそれぞれの男、女を探し求め歩くことで恋心が生まれた。
 結構洒落たことを吉行が言う。

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日本の農業

この前新聞で昨年の日本の農業生産額が約9兆円であることを知った。それでもう少し調べる。この9兆円は、中国、米国、インド、ブラジjルに次いで世界第5位。日本は世界でも屈指の農業大国との評価を世界から受けている。
 国民一人当たりの年間食料品輸入額は360ドルで先進7か国中最下位のアメリカに次いで下から2位。イギリスやドイツの半分以下。
 しかし、日本の食糧自給率は40%以下になり危機的と大騒ぎしている。一体これはどういうことなのだろう。これがおかしいのだが、自給率というのは、生産、輸入食料品を消費カロリーに換算して算出している。輸入品は肉類等日本生産品よりカロリーが高いものが多いため、えらく自給率が低いようにみえるのである。しかも、輸入品は外食産業で多く使われ廃棄する割合が高い。この廃棄を減らせば自給率はかなり高くなる。
 事実金額ベースで計算した食料自給率66%で先進国の中でも上位であり、明らかに農業大国なのである。
いったい何を信じるべきか。頭がくらくらしてくる。
 そうは言っても、日本の農業が瀬戸際にきていることは、地方の荒廃、農業就業平均年齢をみてもわかる。
年間生産額が9兆円か。手元に引き寄せた週刊誌にはパチンコの年間売上が19兆円。それも、最高時から35%も減少していると書かれている。心の底より歎息。

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村上龍 「逃げる中高年、希望のない若者たち」(幻冬舎文庫)

村上龍 「逃げる中高年、希望のない若者たち」(幻冬舎文庫)
僕らの青春時代では、テニス、スキーをやらない人は、つまはじきにされ、人間扱いをしてもらえなかった。スノボーが盛んになってスキーをする人はダサクなり、ましてテニスは超マイナーになり、あれほど空地といえばすべてテニスコートだったのが、全くなくなり、それにつれテニスをやる人も全く見なくなった。
 村上龍はそのテニスの世界から飛び出さない。顔つきも態度も語ることもいかにも暑苦しい。若者のことも、老人のことも皆理解していて同じように苦悩しているように見えるが
根本の発想は、テニス流行時代から飛び出してはいない。
 俺たちにはビートルズが、ローリングストーンズがあった。それが消え今はキューバ音楽だなんて気取ってみてもそれはテニス仲間以外共鳴する人はいない。いい加減ビートルズから離れたら?
 中田英寿がいなくなり、特に日本代表のサッカーがつまらなくなり、もう代表戦を中心としたサッカーは見ないことにしたと、偉そうにいきがる。
 その舌の根が乾かないうちに、フランスワールドカップでの日本チームの戦いぶりをああでもないこうでもないと熱弁をふるう。これが団塊とその直後のテニス世代の特徴である。

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アンソロジー  「夜」(百年文庫)

アンソロジー  「夜」(百年文庫)
カポーティ、吉村淳之介、アンダスンの短編を収録。どの作品も一級品。
カポーティ「夜の樹」。
子供のころ、夜、悪霊にとりつかれた木の枝がいつも覆いかぶさっていた。お化け、死霊、死、悪霊が逃げることもできないくらいたくさん覆いかぶさっていた。若い娘になったケイが汽車旅をしている。目の前に座っているのが、荒んだ気配の男女2人連れ。男は眼も見えず耳も聞こえない。すさまじい身の上話を連れの女がする。女が席をはずすと、男がやにわに手を肩にふれながら覆いかぶさってくる。
 逃げたい。でも逃げ場が無い。子供のころの死霊と同じ。いつまでたってもケイに逃げ場がない。
 吉行の作品も戦争時に密通した女、気が狂った女に引っ張られ結婚。そして逃げ場を失った男。
 アンダスン。故郷を捨てたウィル。小さな町の工場の工員となり働く。毎日、同じ作業を繰り返し。昼も夜も工員とともに飯を食べ、たまに街にはでるが同じ日々のくりかえし。
 今日が行列になって毎日繰り返すだけ。全く明日が来ない、明日にとぶことができない日々の繰り返しが絶望につながっている。
 

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法月綸太郎  「一の悲劇」 (祥伝社文庫)

法月綸太郎  「一の悲劇」 (祥伝社文庫)
正統派推理小説。
作者と同じ名前の名探偵が登場する。この類の推理小説の欠陥は、名探偵は無謬であるという点。
 最後がどうにも懲りすぎ。残り30ページでちょっと納得はいかなかったが、犯人が決まったと思ったところ、最後の5ページでまた別の真犯人が明かされる。大どんでん返しが用意されていた。それがどうにも自然でない。三浦靖史が殺された際、一の数字をしめしたダイインメセージを三浦が残す。
 その一、犯人は和美なのだが、三浦は和美の名前が一美だと思っていたからなんて、こじつけも過ぎる。

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高杉良  「破壊者たち」(講談社文庫)

高杉良  「破壊者たち」(講談社文庫)
小泉首相の金融改革の推進者として登場した竹中平蔵。小泉と竹中の評価は、日本をズタズタに破壊。中間層を貧困層へおしやった張本人として悪人として思われていることがしばしば。しかしその反意語で登場した民主党政権で、貧困層を中間層にもどすどころか、更に富裕層と貧困層の2極化が進んだため、なんとなく、巷間言われるほど小泉、竹中ラインはひどかったのかよくわからない思いが残る。
 この作品は、竹中とコンサルタント会社の木村剛が時代の寵児として、新しいビジネスモデル銀行を立ち上げそれが失敗に終わるまでの過程を描いている。
 木村は私利私欲の固まりで悪の見本のごとくあとがきに佐高信が書いているし、高杉も懸命に木村を悪人のように描こうとしている。読んでみるとそれほど悪人にはみえてこない。
 それより、木村に誘われホイホイついていって、社外取締役となった作家江上剛のほうが尻軽で信念もないバカな調子者にみえた。さもありなんとも思った。
 またかの悲劇ドキュメント「愛と死をみつめて」の河野真が、ブラックジャーナリスト雑誌「経済界」に勤め、世の裏側であくどいことに手を染めていたことをこの作品で知り驚いた。

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吉村昭  「月夜の記憶」(講談社文庫)

吉村昭  「月夜の記憶」(講談社文庫)
誰だか作家名を忘れたが、それまで私小説的なものや現在起きている事象を丹念に拾って佳品を創っていた吉村が突然「戦艦武蔵」で売れ始めると、以前の作風を忘れたかのように歴史物、戦記物を書き出したのをみて、残念だと一言言った。時々私もその通りと頷く。
 このエッセイ集には吉村の人生観と、物を見る揺るがぬ価値観があますところなく描かれている。本当に良いエッセイ集である。
 終戦後、吉村は驚く。「俺は帝国主義、軍国主義に反対だった。それを言ったがために厳しい弾圧を受けた」「庶民は罪深い戦争を呪い続けたけれど、戦争に巻き込まれ多くの被害を被った。」「特攻隊は全くの犬死だった。彼らはただ軍部の指導者に操られただけであった。」
 これほど多くの人が戦争に反対したり呪っていたり、特攻隊を侮蔑していたとは知らなかったと。戦争中やそんな声はちっとも聞いたことはなかった。
 人間とは何と都合よく右でも左でも恥ずかしくもなく豹変するものだろう。
どうしても胸にはいらない論がある。憲法9条があるから戦争は防ぐことができた。アメリカの抑止力があったから、中国やソ連からの戦争を防いだ。平和国家としての日本の歩みが戦争を防いだ。本当にそうかなと疑う。
 あの豹変を見よ。それはまた事態が変われば、昨日を忘れて人々は豹変するのである。
だから、戦争は悲惨であり、絶対戦争はしてはいけない、理屈でなく、ここだけは人間は豹変してはならない。そのために吉村は戦争ものをこつこつと創る。

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吉行淳之介  「贋食物誌」 (中公文庫)

吉行淳之介  「贋食物誌」 (中公文庫)
これ、殆ど別本「ダンディな食卓」と同じ内容。出版社はときどき本のタイトルを変え出版する。お金を損したことにちょっぴり落ち込む。こういう詐欺はやめてほしい。
 それにしても、吉行のエッセイは、パチンコを含めた賭け事の話と、女、たいてい銀座のクラブで働いている女性の話が多い。作家活動に入ってから、病気、女、パチンコ、マージャンだけの世界をぐるぐる廻っていただけのように思える。
 さらさらと達観して世を見渡す生き様が、ギラギラしたひとたちからは魅力的な人に吉村は映り、人がまた人が吉行の周りには集まる。
 だから、そう苦労もせず、エッセイのネタは拾える。

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老人と暗闇

地区の自治会活動として、昨日、9月の敬老会への出欠確認で対象者の家を訪問しました。
敬老会出席でこる方は77歳以上ですが、高齢化社会を反映して40軒近くもあり大変でした。そこで、普段は隠れて見えない老人世帯の実情に接しかなり驚愕と恐怖を覚えました。

当然大概のお年寄りはお子さん夫婦が面倒をみていたり、家族がと同居していなくても自身がお元気で溌剌と暮らしています。
孤老死が時々問題になります。周りも気が付かなかったし、民生委員も訪問時気が付かなかったとよく言われ、そんなことがあるのかと思っていましたが、昨日、どうして孤老死が起きるか老人宅を訪問して知りました。
 家におられるのはわかりますが、家じゅう鍵をかけていくら呼びかけてもチャイムを鳴らしてもでてこない孤老の方の家が3軒ありました。体が不自由なのか、耳が遠くなり聞こえないかが理由に思いますが、それ以外には合鍵を所持している人しか家にいれないようにしている家でした。合鍵は離れて暮らしている子供たちがもっているのです。
詐欺にあったり、身の危険にさらされたり、徘徊を防ぐために子供たちが取っている方法だと思います。これでは、何かあったとき、近所の人や民生委員の人が気付くことは難しくなります。

それから、結婚できない60過ぎの息子との2人暮らしという家も何軒かありました。そういう家はまず息子も引きこもりで外にでません。また、老親との関係が恐ろしいほど悪く、日がな一日一言も会話しないか、喧嘩だけが唯一の会話になっています。ジメーっとして暗く、少し異臭も漂っています。結婚はしておいたほうが良いと心底思いました。

また、一人娘が身体障碍者で、年老いたお母さんが面倒をみているという家もあり辛くて見るにたえませんでした。

すべてが幸せということはありませんが、私の住む街は、それなりに平凡な人々の営みばかりと思っていました。しかし、その平凡に、暗く深い闇が確実にしみこんできている。こんな、コンビニエンスストアが4軒もあるという表面的に明るくみえる街にも。恐ろしいことです。

by はなゆめ爺や

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土屋賢二  「ワラをつかむ男」 (文春文庫)

土屋賢二  「ワラをつかむ男」 (文春文庫)
どこかの少数民族なのだそうだが、空をとぶものは、飛行機でも、鳥でも、昆虫でも一つの言葉しかない人たちがいるらしい。そこでは数字も「1,2,3それ以外は たくさん」しかない。だから変な会話になる。
 「今日はお金をたくさんしか持ってないから、お願い! たくさんまけてくんない?」
なんて。
 物の見方なんてどんなことも解釈によって、明るく前向きになる。
ごくまれにホームランも打つが、この4番打者は年がら年じゅう三振ばかりする。今日もワンアウト満塁であえなく三振。ここでだめなやつだと嘆いてはいけない。よくぞ、併殺をさけてくれた。偉い奴とおもわなきゃ。
 まあこんな話がえんえんと書かれている本です。

by はなゆめ爺や

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吉村昭  「長英逃亡」 (新潮文庫)

吉村昭  「長英逃亡」(上)(新潮文庫)
吉村昭  「長英逃亡」(下)(新潮文庫)
高野長英は江戸時代後期の医者であり蘭学者。長英活躍当時では、日本で最も優秀な蘭学者であった。日本で初めて、ピタゴラスやガリレオを紹介している。
この作品では、幕府の「異国船打ち払い令」に反対して捕まり無期懲役の刑を受けたが、非人であった栄蔵をそそのかし、牢屋に火をつけさせ、火事にして脱獄。そこから幕府につかまり自害して果てるまでの6年半の長英の逃亡を扱う。
 それにしても吉村はどうして長英逃亡記を書こうと思ったのだろうか。この作品を読んだだけではその意図が伝わってこない。長英、有名ではあるが、歴史上それほど著名というわけではない。
 長英の時代は水戸で起こった尊王攘夷が猛威をふるいだしたときである。黒船襲来前夜の時代である。鎖国を続けることが絶対だというとき、老中阿部、井伊大老は尊王攘夷を排して開国に踏み切った。
 長英の時代を吉村はしつこく描く。長英逃亡、シーボルト追放事件、杉田玄白、前野良沢の漢医から西洋医学への転換。大黒屋光太夫をはじめとするロシア漂流記。それによって
知る外国の進んだ文明。
 吉村は黒船は開国のきっかけを作ったのであると言いたいのだろう。それ以前に有名、無名の人々の開国への強い要請や、海外の進んだ状況を知るにつけ、開国は日本の発展のためには必須と幕府はすでに認識していた。
 吉村は明治維新への道は、長英の時代の人々が刻苦の末に切り開いたと言いたいのだと思う。


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藤原正彦  「始末に困る人」(新潮文庫)

藤原正彦  「始末に困る人」(新潮文庫)
ちょうどこのエッセイを藤原が連載していたときに、東北大震災がおこり原発事故がおきた。大変な事態がつぎつぎとエッセイ連載中におこる。絆こそ世界に誇れる日本文化などと藤原は叫ぶ。
 その中で際立つのが、放射能漏れや拡散や、第2、第3の爆発を防ぐための東電現場の人々の日々の奮闘、格闘ぶり。現場の奮闘を藤原が胸打つ文で称賛と尊敬で紹介する。更に放射能を浴びることも怖れず、現場で奮闘する人々の姿を、海外でも驚きをもって受け止められ、称賛の嵐となっていることも藤原は紹介している。
 少し前に朝日新聞が、現場では、吉田所長の指示を無視して、現場では職場を放棄、安全な事務所2階に撤退をしていたと記事にした。藤原の当時のエッセイを読んでみて朝日はどうしてこんな記事を書いたのだろうと怒りより悲しく思った。

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吉村昭 「花渡る海」(中公文庫)

吉村昭 「花渡る海」(中公文庫)
作品紹介に、主人公久蔵が乗っていた船が難破。それがロシアに到着。ロシアで天然痘予防の種痘を知り、日本に持ち帰ったが、幕府の無理解により、導入ができなかった、と書いてあったから、てっきり久蔵の種痘導入の挑戦の物語だと思ったが、読めども、読めども
そんなところは全くでてこない。
 漂流の厳しさとロシアで異人としての苦難がずーっと描かれる。これでは「大黒屋光太夫」とテーマは全く同じ。まったく何で吉村がまた、ロシア体験記を描いたのか。
 結局最後の30ページに種痘のことがでてくるが、久蔵の種痘紹介部分は数行で実に素気ない。あとは種痘導入普及までの物語が続くだけ。それは久蔵とは全く関連がない。
 かなりがっかりした作品だった。


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吉村昭  「殉国」 (文春文庫)

吉村昭  「殉国」 (文春文庫)
トリアージという言葉がある。
大地震のような大災害が発生して、たくさんの傷害者が発生。そのとき、全員を助けることはできないと判断したとき、受けた傷の程度により、生き抜く可能性がある負傷者と生き抜くことが困難と思われる負傷者を選別して、困難と思われる負傷者は放置、治療しないようにすることを言う。
 本作品は大戦末期の沖縄で、14歳で兵隊にとられ、最後の沖縄での戦いをした比嘉真一二等兵の体験を描いている。夥しい数の負傷兵が前線から救護所に運び込まれてくる。アメリカ軍はもうすぐそこまで迫ってきている。救護所をたたむか、放置して次の安全と思われる場所まで退避せねばならない。そこで、命令がでる。二本足で歩ける負傷者だけを肩でかついで連れ出せと。比嘉たちは、負傷兵を背負い救護所をでて歩みだす。
 後ろをふりむくと、ものすごい数の取り残された負傷兵が懸命に這いながら比嘉達に追いつこうとしている。


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吉村昭  「ポーツマスの旗」(新潮文庫)

吉村昭  「ポーツマスの旗」(新潮文庫)
吉村の歴史物は、本当は歴史を動かしたのに、全く評価されなかったり、むしろ冷遇された人を掘り起し、彼らの実際の業績を活写し、真実の歴史を描くことにその特質がある。
 日露戦争勝利後、日露講和条約締結交渉の日本全権大使として派遣された小村寿太郎。
日露戦争では数十万の戦死者がで、数十億円の戦費を使った。その結果やっと勝利したにも拘わらず、殆どロシアの提示した講和条件を受諾、日本がとれたのは実効支配していた樺太のうちの南半分のみ。
 結果小村は歴史上最低の外交官、外務大臣との烙印を押される。それを白熱の交渉場面を忠実に再現して、小村こそが誠なる外交官であることを吉村は描こうとしている。
 しかし、それはあまり成功しているとは思えない。小村は結局交渉決裂を決断し、日本への帰国の準備をしていた。交渉決裂ということは、日露戦争が継続されることを意味している。ということは更なる戦死者と、更なる戦費が発生するということを決断したということである。それを止めたのは当時の日本政府。ロシアとの戦争は、次は負けるだろうし、おびただしい犠牲者をだすだろうという情勢を判断し決めたこと。
 吉村の小村への感情移入は、吉村の本来の想いと現実は完全に解離し、物語は破綻している。


by はなゆめ爺や

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吉村昭  「虹の翼」(文春文庫)

吉村昭  「虹の翼」(文春文庫)
日本人は創意工夫をもって、世の中に役立つものを作り出すことは得意なのだが、独創性や新しい発明ということには欧米に比べ劣る。それは教育の問題にあるようなことが謂れ、教育改革の必要性が常に議論として交わされる。
 本当にそうだろうか。独創性のある発明は日本人によってたくさん生み出され、最近は多くのノーベル賞受賞者が輩出されている。不思議なことなのだが、受賞によってその人の名は世間に知られ称賛されるのだが、受賞前には殆ど名前が世に登場しないのである。つまり、独創性の評価は常に海外によってなされるのである。日本にはその価値を評価し称賛する土壌が皆無なのである。
 この作品の主人公二宮常八は、あのライト兄弟の12年前に飛行機を試作し、滑走後10Mを空中で飛ばしたのである。しかし、誰も評価してくれなかった。日本人にそんなことを発明できるわけがないと二宮の上申をことごとく軍の上司が握りつぶしたのである。
 マスコミは科学に弱すぎる。たまに独創性なるものを取り上げると小保方さんのような
インチキ論文にふりまわされる。

by はなゆめ爺や

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吉村昭  「暁の旅人」(講談社文庫)

吉村昭  「暁の旅人」(講談社文庫)
幕末、オランダの医官ポンペより実証的医学を学んだ松本良順の生涯を描く。
松本良順は司馬遼太郎も「胡蝶の夢」で描いている。司馬は悲劇であれ成功劇であれ、主人公を英雄的に際立たせる。そのために不必要な資料は読んでも無視する。また、結構史実とは無関係に頭のなかで物語を作り上げる。司馬の松本は、漢方医学を是としていた幕府に西洋医学取り入れさせたり、明治の医学界をリードした革命的先駆者として描かれる。
 吉村は史料をくまなくあたり、史実に沿い淡々と松本の実像を描く。
松本は医家の家に養子にでている。この医家は漢方医で有名で、幕府にも重用されている。松本はもちろん蘭医学を信望するが、養父や親戚をおもんばかり、蘭医学の採用を幕府にせまりはしない。むしろ幕府が緒方洪庵などの求めに応じて蘭医学を採用した、その後を松本は歩む。
 一見地味に見えるが、そんな悩みに右往左往しながら医学を前に進めていく吉村の描く松本のほうが司馬の松本より人間らしくみえ、シンパシーを感じる。


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吉村昭  「海の祭礼」 (文春文庫)

吉村昭  「海の祭礼」 (文春文庫)
3つの話によって構成されている。
アメリカ捕鯨船の乗組員だった、ラナルド・マクドナルドがアメリカをでて、日本に到着そのまま長崎に送られるまで。
 このマクドナルドに通詞森山栄之助をはじめ主だった通詞が、マクドナルドに懸命に英語を学び習得してゆくところ。
 その森山が、ペリーの黒船やハリスをはじめ、イギリス、ロシアなどとの交渉通訳として、実質条約交渉に従事し、開国にむけ日本の難局を乗り越えさせた。特に、列強、特にアメリカは軍備の圧倒的な力を背景に、少しでも気に入らねばすぐに戦争をすると威圧する。
 このような威圧に、恐れを感じても、それをはねのけ戦争にまきこまれることを防ぎ外交を展開した森山は日本歴史上もっとも卓越した外交官であったと思う。しかし、全く森山は歴史上の人物としては無名。誰もその存在を知らない。
 抑止力を背景に諸外国との交渉をすることが肝要という政治家は、森山を見習ってほしい。重要なことは何があっても、人々を戦争の惨禍にまきこまないという強固な信念こそが
諸外国との交渉には必要なのである。


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吉村昭  「陸奥撃沈」 (新潮文庫)

吉村昭  「陸奥撃沈」 (新潮文庫)
さすがに飽きた。吉村はなぜこれほどに、戦争ものを書いたのだろう。反戦を意図しているわけではない。ひたすら、証言者をさがし、その証言を客観的に積み上げ、できるだけ個人の想い感情を排除し、史実のみを積み上げる。しかし、個々の史実は戦争全体を語るのではなく、ある部分だけを取り上げるだけになり、その歴史的価値評価はまったくわからない。
 戦艦陸奥の沈没の原因は定かではない。吉村は乗組員爆破説をとる。その原因は、士官は
若く少尉で軍人生をはじめ、その給料はいろいろ手当をいれ100円にもなる。一方、赤紙一枚で戦争に駆り出された人たちは二等兵からスタート。殴られ虫けらのように扱われ、戦場では真っ先に前線に送り出されるのに、給料は7円。その不満が、乗組員爆破説の論拠となっている。
 うがった知識人は、吉村は軍における構造は現代社会構造そのものであり、吉村は現代の矛盾を提示しているのだと言う。
 本当にそうかなあ。単に「戦艦武蔵」が好評だったので、その流れで書いた作品のように私は思う。

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朝日新聞と吉村昭

今日8月20日朝日新聞朝刊一面トップにアルツハイマー病研究の国家事業に対し、政府が補助金をだすか審査する委員に、この事業の受給者がはいっていたとのスクープ記事を掲載した。
朝日新聞は時々、どうだと言わんばかりにこうしたスクープ?を掲載する。でも、不思議なことに全く他のマスコミが追随することはないし、朝日の意気込みとは別に巷で全く話題にもなったことが無い。 慰安婦や吉田調書などの虚報記事で、多くの人たちが朝日の記事を眉唾記事としてみるようになった。また、あの朝日が変なことをしていると。まともに朝日を信用する人が極端に減ってしまった。
 作家吉村昭は多くの戦争小説を書いている。彼は小説にイデオロギーを入れてはいけない、戦争反対、平和が大事ということを作家が強く意識すると、悲劇的な部分を大幅に誇張したり、嘘を書いてしまうことがあるからと言う。
 あくまで、真実をありのままに描く。そうすれば、自然とその先の国家の横暴や、人間のもつ業や宿唖がみえてくると吉村は言う。
 吉村の作品には派手さが無い。地味な作家である。しかし、派手な戦争小説がはかなく消滅してゆくなかで、吉村の作品は繰り返し新装版がでてくる。本物を知りたいと願う人々が確かにいることが嬉しい。
 事実、真実を朝日新聞には書いてほしい。そして主張やイデオロギーは一面以外で思う存分展開してほしい。



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吉村昭  「冬の鷹」(新潮文庫)

吉村昭  「冬の鷹」(新潮文庫)
今の時代、忌み嫌われることが根気。粘り強くこつこつ途切れることなく事を成し遂げてゆくことは全く評価されなくなった。
 企業は投資家のみをみる。だから、4半期決算を公表する。たった3か月の業績で、企業は右に左に動く。投資家も短期間の成果を求め、それに適う投資先を探す。
 会社はこつこつ屋を排除する。中身より包装紙のきらびやかさに反応する。プレゼが実際の仕事より重要視される。
 前野良沢はパフォーマンスを排除し、完璧をめざす、根気がすべてのこつこつ屋。杉田玄白はその反対。いつの世も、スポットライトを浴び、成果を独り占めするのは、機をみるに敏で、世渡り上手な人間。
 吉村は前野良沢の生き様や視点から、杉田玄白や平賀源内を評価する。吉村は自らの作家人生を前野に変えて表現している。派手なパフォーマンス作家に対する吉村の嫌悪がでている。

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吉村昭  「黒船」 (中公文庫)

吉村昭  「黒船」 (中公文庫)
黒船でペリーが浦賀沖にやってきて以来、その通詞(通訳)として活躍した堀達之助の激動の半生を描いた作品。タイトルとしている黒船がアメリカからやってきて、和親条約を締結するまで、そのアメリカを追うようにやってくるイギリス船、ロシアあるいはドイツ船との
緊迫した交渉する場面もそれなりに読み応えがあるが、やはり日本で初めての英和辞典を編纂するところが作品タイトルとはずれるが面白い。
 オランダ語英語辞典を参照にしながら編纂する。そして、現在の辞典と殆ど同じレベルの辞典を完成させる。それも作り始めてからたった一年八か月で終了させる。
 Ableをチカラアル、タッシテイル
 By をニヨッテ、ニチカク ニシタガッテ
 By sea を船路にて
などと和訳できたことは見事だ。
 収められた単語は3万5千語。熟語も例示として収められている。
 日本最初の英和辞典の英名
「POCKET DICTIONARY ENGLISH AND JAPANESE LANGUAGE」
その辞書は袖にいれ携帯に便利な大きさの辞書であった。


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伊集院静  「浅草のおんな」(文春文庫)

伊集院静  「浅草のおんな」(文春文庫)
天草生まれの主人公志万は17の時、相撲取りの幼馴染を追って東京にくるが、相撲取りに捨てられ、橋の上から身投げしようとしていたところを荷役士の留次に救われ、そのまま夫婦となり、今は「志万田」という小料理屋を浅草に構えている。
 命の恩人留次が亡くなると、留次の下で働いていた「三代目」と「甲士」というどちらも気風のいい2人の男に惚れられ結婚を迫られる。
 どっちと結びつくのか、あるいはどちらとも結びつかないのかちょっと平凡だがどうなるのかと思って読み進める。
 浅草でやくざの抗争がおき、一方の組の親分が刺され殺され、刺した若いもんも背中に傷を負う。この若いもんが志万の家に逃げ込む。志万が傷の手当をする。背中を視る。
 たまらなく愛おしく、胸が高まる。若いもんも志万を強く抱きたくなる。
恋はまさに稲妻のごとく一瞬にやってくる。そして志万は8年ぶりに男に抱かれる。
 恋には理由も背景もなく、一瞬にして生まれることがある。よくできている小説である。

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吉行淳之介 開高健  「美酒について」(新潮文庫)

吉行淳之介 開高健  「美酒について」(新潮文庫)
吉行と開高が3夜にわたり、美酒、美食を源に、生きることの薀蓄を語りつくす。
吉行の人生は、病とそれによる手術の連続で彩られる。しかし、吉行の作品では、それが
壮絶な病との戦いのような描写にならず、実に日常の風景のように淡々と語られる。
 いつも微熱と体のだるさを感じながら、吉行はどう自分の持つ病をコントロールしてきたのだろう。ここを読み解けば吉行文学の神髄がわかる。
 この本の解説者は、吉行の妄想力により病気の身をコントロールしてきたと言う。うまいことを言うものだと感心はするが、少し違和感が残る。
 旅をしても、街を歩いても、そこで見る風景は、すぐに移り行き、幻影だけが残像として残る。酒の中に溺れ、女性をはべらし飲むひとときも、遊女の添い寝で夢を貪るひとときも
うたかたであり、夢なのか現実なのか境界がはっきりしない。儚さの連続こそが人生そのもの。
 この儚さのなかでの漂いが、病身をコントロールしてくれている。
こんな、我々とは異なる人生を送っている作家の視座は実に面白く時に読者をはっとさせる。
 戦争直後、吉行はこの荒廃になか、美女はどこにいるのだろうと思う。巷には栄養失調で痩せた、顔色もどす黒い女性ばかり。もちろん吉行は知っている。美女、お嬢様は特権階級の奥座敷にいることは。でもそんな女性など手が届くどころか、見ることさえない。
 しかし、今は世の中、突然登場した民主主義や男女平等実現のうねりが国全体におおっている。吉行は思う。そうだ美女は共産党の中にいるはずと。いいなあ、こういう発想。

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