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2014年06月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年08月

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井上靖  「姥捨」  (新潮文庫)

井上靖  「姥捨」  (新潮文庫)
この前テレビをみていたら、奄美大島の車が入れない限界集落で、84歳のおばあさんが自給自足の一人暮らしをしているルポを流していた。実に開放感にあふれ生き生きとしていた。我々はどうも既成概念にとらわれて肝心なことに気がついていない気がする。
 老人が死期に向かって進んでいる時は、家族で支えあい、最後は家族で看取ってやることが最高に老人にとって幸せ。そこまでいかなくても、きちんとした施設に入れてあげ手厚い介護をしてあげる。寂しいのは一人暮らしの老人。こういう老人には孤独にさせないよう常に地域の人たちが気配りをして声をかけてあげる。
 しかし、こんな考えの真逆がある。死はどうせやってくる。老後を迎えるまでは、家族を支え、夫、子供の世話や、時にその関係のわずらわしさに常に苦労してきた。せめて死ぬ前くらいになったら、世間や家族の憂さから解放され一人でのびのび暮らせるようにしたい。
 体がいうことをきかなくなり、暮らしが成り立たなくなる。そこからどんな苦痛があろうが、それが死ぬとき、それを受け入れ一人で自由に死んでゆきたい。
 テレビに映る84歳のおばあさんはすでにその覚悟ができているように思えた。
井上の「姥捨」深沢七郎の「楢山節考」を読むと、覚悟ができると、そこからの世界は暗い悲しみには彩られてはおらず、明るく、自由な世界が広がっていることを教えてくれる。

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吉村昭  「空白の戦記」(新潮文庫)

吉村昭  「空白の戦記」(新潮文庫)
宇垣中将という有名な戦争指揮官がいる。この人同じ吉村の作品「零式戦闘機」に登場する。
できたばかりの「零式戦闘機」でアメリカ軍ブイン基地を偵察にかの山本五十六大将とともにでかける。この偵察をアメリカが事前に察知していて、山本大将の乗った一番機が迎撃され、墜落炎上。山本大将はこれで戦死。
 山本大将を死なせてしまったという負い目があったのか。宇垣は日本がポツダム宣言を受諾、敗戦を宣言した玉音放送の後の8月15日の16時に特攻隊になりアメリカ戦艦に向かって玉砕をした。
 特攻、玉砕は宇垣中将だけで行えばそれなりに納得もできるのだが、何と23名の若者を引き連れて実施された。アメリカ艦隊に到着する前に、戦闘機が故障したりして不時着で助かった者もいたが、少なくとも11人は特攻死した。本当に宇垣は最低でバカな男と思う。
 戦争は終わっていて、それを知っていて若者を死へおいやったのである。
 この吉村の作品で初めて特攻隊で亡くなった若者が2000名余になることを知った。

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吉村昭  「幕府軍艦回天始末」(文春文庫)

吉村昭  「幕府軍艦回天始末」(文春文庫)
吉村が旅ではなく、東京以外で住居を持った村が東北の三陸海岸にある。田野畑村である。
ここでの集団自殺を扱った物語「星への旅」で太宰賞をとり、作家としての地位を確保した。
 三陸は吉村にとって殊更、執筆に大切な地となり、思い入れも強い。
この作品は、旧幕府軍の戦艦「回天」の箱館五稜郭戦争で、政府軍に火をつけられ沈没する物語を描いている。しかし、吉村がそれ以上に描かねばならなかったのは、三陸沖の複雑きわまる海岸線と常に波浪がたけくるっている、その場所で戦わずして、座礁してしまった
旧幕府軍の旗艦「開陽」及び沈没した「高雄」。この悲劇により榎本率いる旧幕府軍が政府軍に負けてしまったことを集中して物語を創ればよかった。
 タイトルに引かれて「回天」を大きく扱ったため、三陸海岸での悲劇に対する印象が薄くなってしまっている。


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村上龍  「55歳からのハローライフ」 (幻冬舎文庫)

村上龍  「55歳からのハローライフ」 (幻冬舎文庫)
俺は超一流の営業マン。「信頼」と「コミュニケーション力」をベースに「徹底して食い下がれ」をモットーに大きな実績をものにし会社に貢献してきた。
 リーマンショック以来、不況で会社の業績が低迷、会社からの要請もあったし、退職加算金も魅力があり、思い切って定年退職前に会社を去った。青春のころ見たアメリカ映画のように、キャンピングカーを買い込んで、妻と二人できままにあちこち旅行しようと考えていた。ところが妻が当然喜ぶと思っていたのだが、この提案にいい顔をしない。会社が大事と家でふんぞりかえっている間に、肝心な家庭が見えなくなっていた。妻はその間にパートや趣味を通じて仲間と過ごす空間を持ちそれを膨らましていた。その空間、時間を夫に邪魔
されたくなかった。
 将来への貯えに対する不安もあった。だから、俺は妻には内緒で再就職活動を始めた。
最初はやはり営業でつながりがあり、ゴルフも宴会も山ほどやったお客のところにお願いに行った。言葉は慇懃無礼、で、やんわりと再就職を断られる。雲行きが怪しい。それではと人材派遣会社にゆく。
 「ブラインドタッチはできますか。」「何?ブラインドタッチって」パソコンをキーをみることなく打つことなんだって。どぎまぎしていると、「外国語は何ができますか。」「海外駐在はしましたか」速射砲のごとく、宙をさまようような質問がとんでくる。そして最後に、「自分を理解するために、自分史を書いてもってきてください。」と言われる。
 テレビドラマ化もされベストセラーになった村上龍の原作。よく書けている。

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朝井リョウ  「もういちど生まれる」(幻冬舎文庫)

朝井リョウ  「もういちど生まれる」(幻冬舎文庫)
作者は若干20歳であのベストセラー「桐島、部活やめるってよ」を世に送り出し、更に史上最年少「何者」で直木賞を受賞した天才作家である。
 青春群像として少しあれもこれも書きすぎているが、確かに作家としての将来の可能性は感じさせる。
高校生と大学生の違いが印象的に描かれている。
梢は予備校に通っている。高校の仲間は、現役、浪人ともすべて大学生になっている。新しい友達や恋人をみつけ、高校とは違った世界を謳歌している。梢はまだ予備校に通っている。受験時代から同じ時間に予備校にやってきて、同じ自習室で講義が終わっても勉強している。まだ高校生が続いている。
 遥は高校ではダンス部。幾つかの大会で優勝したり入賞したり。高校3年、他の部員はみんな受験勉強にはいる。遥は普通のように大学には行きたくなかったので、高校のときに通っていたダンススクールでダンスを続けた。
 ひとりぼっちになっても懸命にダンスをした。ディズニーのダンサーに採用された一緒の子は、最初から、プロのダンサーを目指していて、遥が及ばない能力を持っていた。
 でも大きな違いは?遥は大学に行きたくなくてダンスを続けてしまったこと。



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川上弘美  「天頂より少し下って」(小学館文庫)

川上弘美  「天頂より少し下って」(小学館文庫)
主人公の私は45歳。翻訳の仕事をしている。で、私は今恋をしているはずである。恋をしているに違いない。相手の名前は涼。
 私は酒が好きなはずである。いや好きに違いない。それで、涼は全くの下戸。だから、飲むのはいつも私。なんとなく会話が弾まない。でも、恋をしていることには間違いない。
 私は飲んで、飲んで、飲みまくる。そして、自分を忘れようとする。忘れたつもりで、涼にラブホテルで抱かれる。いや、ひょっとすると私が涼を抱いているのかもしれない。
 だから、私は今恋をしているに違いない。恋をしているのだ。
前の旦那を含めて、それなりに今まで恋愛をしてきた。そのときの恋人とどれだけ愛し合ったかが浮かんでくる前に、「あいつは性器がでかかった。」ということが思い浮かんでしまう45歳。いつからか恋人が単なる物体に変わってしまった。
 私は恋をしている。名前は涼。単なる物体にしてはならない。

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山田詠美  「ジェントルマン」 (講談社文庫)

山田詠美  「ジェントルマン」 (講談社文庫)
山田詠美の作品は、本音からくる体験と、それを信じる強い気持ちが重なり合い、それが天才的な言葉の発見、表現により魅力的な山田ワールドを作り上げてきた。
 この作品も、言葉や彼女の持つ信念は変わらず表現されているが、多分、本能や体験を基礎に作った作品でなく、頭で懸命に作り上げた作品であるため、言い回しがくどく、やや観念な味が強くですぎ、わくわくするような山田ワールドとはかなり異なってしまっている。
 でも、山田独特の訓語や言葉拾いは随所にちりばめてある。そして、この物語では言葉を紡いで、また紡いで、そして最後には言葉は失われてしまう。そこまで行ってしまった、稀有な文学作品になっている。


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丹羽文雄   「献身」(新潮文庫)

丹羽文雄   「献身」(新潮文庫)
昭和35年、読売新聞連載小説。とにかく長い。小さい文字で680ページを超える。
この時代の風潮を古い観念の人が忌み嫌う典型小説。石川達三の小説に似ている。
 戦前に育った古いタイプ、辣腕経営者ではあるが、会社においても、世間においても自信家で自己が全て正しいとふるまう主人公一条英信。彼は、妻を含む4人の同時進行で情交をする女性がいる。
 妻を含め3人は、その環境を受け入れ、英信に対して、文句は一切言わず、まさに献身的に振る舞うことがイコール幸せであり、英信への愛情表現と思っている。
 一人朝子だけが、その環境をよしとせず一条を憎む。朝子は、英信と他の女性との関係を切るよう執拗に英信に迫る。朝子は、英信と他の女性との間にできた子を養子として引き取ったり、あてつけに、英信の親友柏木と情交したりする。行動においても言動においても、民主主義、男女平等にふさわしい女性としてまさに「献身」とは正反対の女性として物語に登場する。
 丹羽も石川も、こういう自己主張の強い女性やそれを生み出す社会風潮を徹底して嫌う。

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三木卓  「ほろびた国の旅」(角川文庫

三木卓  「ほろびた国の旅」(角川文庫)
後味の悪い小説だ。
図書館の中国専門書コーナーに主人公攻められ押しつけられた瞬間、本棚が反転、そのまま昭和18年の満州国の世界にタイムスリップ。
 昭和18年当時、日本人が他国を侵略、大人から子供までいかに中国や蒙古、朝鮮のひとたちに対し傲慢で、彼らを差別、蔑んでいたのかを徹底的に描き出す作品。そしてそれがどれほど、蔑んだ人々に苦痛を与えていたのかを三木は多分自らの経験から語っている。
 どうしても三木に問い返したくなる。実際、昭和18年満州にいた時の三木自身の他国に対する態度はどうだったの。その時、三木は傲慢になったりしなかったの。他国の人たちをいじめることに心に痛みを感じていたの。時代が大きく変化した後で、突然、傲慢やいじめはよくないことなどと物語にしてみても胡散臭さがぷんぷん。
 もし、今でも、満州国が健在で、そこに住んでいる多くが日本人であっても、三木はこの物語を書けるような問題意識が持てたのか問いたい。

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松本清張 「隠花の飾り」

あとがきの阿刀田高さんは、「11作中○は5作で△が3作」とか、「ネタ切れじゃないの?」「短編の題材にするほどのものじゃないでしょ」「疲れてきたんじゃない?」とか。
確かに、もうひとひねり欲しかったと思う短編がいくつかありました。

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では、各話の感想を。
足袋>
和服で足ぴったりの足袋を履いて逢引って、ことが終わった後に着るのが面倒くさそうですね。
最後の一文が、著者らしいです。
愛犬>
我が家も、食べ物によく犬猫の毛が混入します。着眼点は面白いけれど、強引な気がしないでもない。
占いは詳しくないんですが、「暗剣殺」ってすごい単語ですね。
北の火箭>
ルポらしい描写の分量が多く、あまり人物が浮かび上がってきません。
視点である第三者が、勝手に二人の仲を想像しているだけということもありうる。
見送って>
披露宴に出る機会はあまりないのですが、こんなに花嫁の母親についてスピーチで言及されるものですかね。
話を盛り上げるためとはいえ、わざとらしいかも。
誤訳>
「うちの旦那は外面がよく、気前よくお金を貸したりおごったりするので家計が苦しいです」という悩みはありがちです。
つまりはそんなオチですが、設定はおもしろいです。
百円硬貨>
「一万円札しかないので、ちょっとそこでくずしてきます」と、荷物を置いたままバスを降りて走る人を見たことがあります。
小銭がなくて困ることはありますね。
お手玉>
2つの事件が描かれています。1つ目もそれなりの分量で、それだけで話が終わるのかと思ったら、2つ目に入る。
「こういう意味で対になっているのか」と、最後に納得できます。

140727_1436~01
小休止

記念に>
「眼の前の、三十半ばに近い女は頬がたるみ、眼のふちには小じわが出来ていた。顔色も濁っていた。弾力のあった腿も軟らかくなった。
二十三歳の見合い相手と比べ、肉の衰えた彼女は何の魅力も感じさせなかった」
と評価した男が、捨てた女に殺されるという展開は、ベタといえばベタです。
でも、「結婚しないことを前提に、ずるずると付き合ってきた。身の引き方もあっさりしていた」と考える男の視点で語られていくので、「まさか殺すほどに想っていたとは!」と意外な気分になれます。
箱根初詣で>
現在と過去の対比というかつながりというか、なんだかしっくりこない。話の順序が違えば、分量の比を変えれば、もっと違うのかもしれない。三人の奥さんのキャラクターはいいと思うのだけど。
再春>
月のものが再び始まったと喜ぶ中年女性。しかし、それは癌による不正出血だった。
どこかで見たような気がする話で、どこだったのか思い出せずにいました。たぶんこのトーマス・マンの短編を引き合いに出している小説がほかにもあったのでしょう。
遺墨>
なかなかぽっくりとは逝けないものです。こういう皮肉な終わり方は、やっぱり松本清張の得意技だと思います。

私と同じ年頃の独身女性もちょこちょこ出てきますが、不倫したり年下男に貢いだり(・ω・;)

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吉村昭  「死のある風景」(文春文庫)

吉村昭  「死のある風景」(文春文庫)
身内、親族の死に接したことから思い出されるそれぞれの人たちとの交流を描いた短編集。
 戦争が終わったとき、反戦平和えを貫き通したという人たちが獄中生活から解放されてまさに時の英雄として出所してきた。吉村は鋭く指摘する。「彼らは決して反戦平和主義者ではない。たまたまアジアを侵略したり、アメリカと対峙して戦う戦争に反対していただけで、これが別の形の戦争であったら、しいたげられた労働者よ手を携えて戦争しようということだったら、人々を彼らは戦争に駆り立てていただろう。」と。
 徴兵に応じず逃げまくった人や、軍隊から逃亡して逃げ切った人がいた。この人たちも戦後反戦を貫いた人として尊敬された。吉村はこれも違うと鋭く指摘をしている。


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吉村昭   「落日の宴」 (講談社文庫)

吉村昭   「落日の宴」(上)(講談社文庫)
吉村昭   「落日の宴」(下)(講談社文庫)
吉村昭の「落日の宴」が新装版で最近講談社文庫より出版された。歴史は常に勝者の側が正義として語られる。特に明治維新は竜馬から始まり伊藤博文、大久保利通、西郷隆盛らが維新功労者として教科書にものり絶賛されている。
徳川幕府はそれほど悪い時代だっただろうか。少なくとも250年以上に渡り、他国と戦争をして犠牲者をだしたことはなかった。唯一、維新の原動力となった薩摩藩が英国艦隊と戦い、犠牲者を多数だしただけだ。
 特に幕末の世界の状況は厳しかった。中国はイギリスをはじめ、列強に蹂躙されていたし、アジアの他の国々も植民地と化し、おびただしい犠牲者をだしていた。更に、欧州ではクリミア戦争が勃発、緊張状態にあった。
 こんな中で、アメリカ、ロシア、フランス、イギリスが日本にやってきて、武力を背景に国交を日本にせまった。もし戦争になったら、日本は瞬間で破壊される。武力には彼我の差があった。全く日本は抑止力はもっていなかった。
 こんな中で、幕府の官吏、老中は地をはうような交渉をした。一歩間違えれば多数の犠牲者とともに、列強の植民地にされていた。しかし、彼らの敢然とした交渉により、日本は戦争にまきこまれることなく、明治を迎えた。
 明治維新の薩長政府は富国強兵、軍備を拡大して、その力を背景にして交渉を進める方向に突き進んだ。軍備増強が戦争抑止力になるはずであった。それは薩長勢力が自らの権益を拡大するためでもあった。結果、日清、日露の戦争に続き、最後は大戦で数百万の日本人が命を無駄に落とした。本当に維新の英雄は素晴らしかったのか。疑問大である。
 抑止力を持たず、交渉、外交力だけで日本を守りぬいた、幕府の要人の力は尊敬に値する。しかし、これらの素晴らしい人々は歴史から完全に抹殺されてしまっている。
 集団的自衛権の確立をする前に、もういちど吉村の「落日の宴」を安倍首相は読んでほしいと心底痛感する。
吉村の「落日の宴」まったく時宣にかなった出版である。是非多くの人に読んでほしいと願うものである。


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「八日目」映画&ノベライズ

一言で言うと、「ダウン症の青年ジョルジュと、エリートサラリーマン中年アリーの友情を描いた作品」です。
映画は一回観ました。本は三回読みました。
本から入ったのですが、ちょっと傷んでいるので写真はナシで。映画情報を載せておきます。

1回目は、泣けました。有能なセールスマンのアリーの壊れていく様が、辛かったんだろうと思います。笑おうとしても笑えない。笑うべきじゃないところで笑いが止まらない。

2回目は、ジョルジュが自殺してしまうという終わり方が、残酷な気がしました。
主要キャラクターが自殺する映画といえば、ガタカがあります。自分に成り代わって生きる主人公のため、自らの破片すら残らぬよう、炎で身を焼いてしまうのです。
「八日目」も、アリーが幸せになるためにはジョルジュが死ななければならなかった。邪魔だったという気がして、2度目の読書はもやっとしました。

3度目は、二人の間には友情があったと素直に思えました。ジョルジュはアリーの幸せを願っていたけれど、彼にとってはやっぱりママが一番で、ママのいる天国に行きたかったのだろう。そう納得しました。
食べちゃいけないけど食べたいチョコをいっぱい食べ、ママの夢を見て、ジョルジュは幸せなまま逝ったのでしょう。
レインマンみたいに、施設に戻ってうまく事がおさまるというものではない。彼らは兄弟じゃないし。

映画は、当たり前ですが本と同じ内容です。ジョルジュの好きな歌手(ルイス・マリアーノ)の歌がどんなものか分かりました。
明るい曲と、二人の抱える孤独のギャップが大きいですね。「僕も君の想像に過ぎないんだよ」と、ルイスがジョルジュに言い聞かせているシーンもあったような。

映画も本もいいと思えた、少ない作品のひとつかもしれない。


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中村航 「トリガール」再び

今朝地方紙でまだ「鳥人間コンテスト」をやっていることを知った。しかも、そのコンテストは今日から。
そのコンテストに私の住んでいる静岡県袋井市から静岡理工科大学が参戦していた。
正直あまりグレードの高い大学では無い。それも田舎の大学。こういう大学の学生の特徴、街でみかけるが、どこかうつむき
加減で覇気が感じられない。しかたなく学校に通っている雰囲気の学生が多い。
 中村航の「トリガール」の主人公ゆきなと破天荒な板場先輩コンビは、いつもおなじみの東京の大学生。でも、この青春目いっぱいコンビは静岡理工科大学の学生のほうが似合う。
 静岡理工科大学が鳥人間に挑戦すると知って、元気一杯の学生がおいるんだわかり、とても嬉しくなった。
頑張れ静岡理工科大学。応援してるぞ!。
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佐木隆三  「越山 田中角栄」(徳間文庫)

佐木隆三  「越山 田中角栄」(徳間文庫)
戦後しばらく、実は民主党という党があった。それも、結構今の民主党と考えが近い党であった。戦後の混乱の中、唯一左翼政権が誕生したことがあった。社会党を中心とした連立政権片山内閣である。この連立与党に民主党は参加していた。そして、何と田中角栄は民主党議員であり、社会党内閣を支える立場にいた。
 戦後の疑獄事件というと、昭電疑獄や造船疑獄が有名であるが、戦後最初の疑獄は炭鉱国管疑獄である。片山内閣は社会主義政策の象徴として、炭鉱をすべて国の管理にする法案を国会に提出。これに田中角栄は与党議員でありながら反対。何しろ炭鉱利権を吸い取るために、九州にすでに田中土建を進出させていたのだから。
 田中角栄はかのロッキード疑獄で逮捕されるのだが、すでに戦後疑獄事件逮捕者第一号として炭鉱国管疑獄で逮捕されている。流石田中角栄である。

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吉村昭  「彰義隊」 (新潮文庫)

吉村昭  「彰義隊」 (新潮文庫)
まったく吉村はすごい。この作品は幕末、上野寛永寺山主だった輪王寺宮の生涯を描いている作品で、同じ輪王寺宮を扱った作品は鴎外も書いている。しかし、鴎外より圧倒的に内容、物語は吉村の作品のほうが充実している。
吉村は、輪王寺宮の逃亡に身をていして助けた松本市郎兵衛など3人の孫を訪ねこの作品のために聞き取り調査をしているのである。今から30年くらい前には、まだ維新のときに活躍していた人たちの孫が辛うじて生きていたのである。その、孫からおじいさんのことを聞いて小説にしている。ここが吉村の凄さなのである。
 吉村の作品は、戦いに負け、滅びてゆくものに慈しみをもち、彼らの視点や行動から
権力者の非道さを描き出す。ここがたまらなくいい。
 彰義隊の義への熱い思いもすばらしい。幕末、幕府側のほうが討幕派より、人間性も知識も豊かな人々がたくさんいたことがこの作品でわかる。
 それに比し、西郷隆盛、大久保利通などはなんと下品で卑しい人間なのだろうとつい思ってしまう。


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井上靖  「天平の甍」 (新潮文庫)

井上靖  「天平の甍」 (新潮文庫)
遣唐使は7世紀から9世紀までの間20回計画され、15回が実行された。ということはしょっちゅう行われていたのではなく、10数年に一回の割合で行われていたのである。
 小さい船、風だけを頼りにして進む。風が無ければ碇をおろして、風がでるまでその地に留まる。少しでも風雨が激しくなると、船は軋み難破し、沈没する。だいたい遣唐使船は4つの船で行われるが、そのうち無事に唐に到着するのは1船だけということもしばしば。
 この作品で扱っている鑑真和上の日本行も4度試みられている。しかも一回は蘇州近くの揚州から出帆しているが日本どころか、長い日にちをかけ何と香港近くの海南島まで流されている。
 この小説の素晴らしさは、偉大なる僧正鑑真に焦点をあてるのではなく、鑑真に寄り添い日本まで同行した若い無名の僧たちの視点から描かれていることである。
何千億人という人々のほとんどすべてが無駄に生き死んでいるように思えるが、その無駄に思える人々が重層に重なり合って今の時代に我々が生きていることを、この物語は静かに我々に教えてくれる。


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吉村昭  「旅行鞄のなか」(文春文庫)

吉村昭  「旅行鞄のなか」(文春文庫)
エッセイ集。
吉村は古今東西の文学作品では短編を好む。若い頃は体に重い疾患を抱えていて、長編を読む体力が無かったため、自然と短編を好むようになったのだと思う。梶井基次郎が特に好きであり、その中でも「闇の絵巻」が好きとこのエッセイ集で書いている。うれしい。私も好きな作品のひとつだから。梶井が真っ暗闇の道を歩いて入院している療養所に帰る。手探りのようにして歩いていると、突然療養所の明かりがみえる。それを梶井はこう表現する。
 「パァーンとシンバルをたたいたようなかんじである。」
吉村も思ったようだが、私もこの作品のこの文章が際立って思い出す。
 吉村はよく殆どが取材のためだが、一人旅をする。長崎と北海道への旅が多く、エッセイでもその両地がよく登場する。
 でも、子細に読むと。どうも吉村は宇和島をこよなく愛しているように思う。宇和島、未知の街。吉村にひかれて行ってみたくなる。


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吉村昭  「夜明けの雷鳴」 (文春文庫)

吉村昭  「夜明けの雷鳴」 (文春文庫)
幕末、水戸藩主徳川斉昭の息子の昭武を代表として、パリ万博に20人が15代将軍徳川慶喜の命により派遣される。この中に随行医としての高松凌雲がいた。
 彼らは何と当時のフランス独裁者ナポレオンと会っている。薩長は軍の顧問として英国に頼り、幕府はこれに対抗してフランスに頼っていたのである。もし、幕府が薩長に勝利していたら、ナポレオンの援助のもと日本の近代化が進んだかもしれない。
 パリ万博に派遣された20人の悲劇は、パリに彼らがいる間に派遣した徳川幕府が倒れ新しい明治体制に政体が移行したことである。
 また凌雲が、箱舘に移り、榎本武揚の戦で敗れた負傷兵の病院をつくり治療に尽くす。その際、政府軍の兵士が病院までせめてきたとき、体を張って、負傷者に敵も味方もない、と
兵士を説得してひあげさせた。
 更にこれ以上の死傷者をだしてはいけないと思った凌雲が、榎本に政府軍に白旗をあげ
和議の交渉にはいらせた。このことがそのごの凌雲の心の奥に重荷として残り、物語はクライマックスに向かう。
 吉村の素晴らしいことは、五稜郭の戦いを政府討幕軍と幕府軍の戦、戦術ものとして描くのではなく、全く新しい医者の行動、その眼から描き、他の大作家たちの作品より優れた
歴史物になっていることである。


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吉村昭  「大黒屋光太夫」 (新潮文庫)

吉村昭  「大黒屋光太夫」(上)(新潮文庫)
吉村昭  「大黒屋光太夫」(下)(新潮文庫)
大黒屋光太夫については、井上靖が「おろしや国粋夢譚」で書いている。この作品は幕府の指示により蘭学者桂川甫周が光太夫から聞き取りをした記録「北槎聞略」に従って描かれている。記録をすることが主の本であるため、中身が人間の物語としては乏しい。
 吉村の凄いところは、光太夫の聞き取り記録があるのだから、同じ船に乗り、海を漂流、ロシアに行き着き、やがてロシアを横断して日本に同じように帰ってきた磯吉にたいしての聞き取り記録もあるはずとして磯吉の故郷、三重県鈴鹿にでむき、とうとうその記録本を発見する。この着想、信念、執念が素晴らしい。
 この三重の記録本は、アリューシャン列島やロシアの自然風土や人間が見事に描かれていた。結果、あのアリューシャン列島での、ロシア人による原住民の虐殺や、何といっても、
磯吉とキリロの妹の密通を吉村は描くことができ、井上の作品よりより人間味あふれた、大河物語を作り上げることに成功している。

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高樹のぶ子 「飛水」

この人の本は久しぶりに読みました。

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おもしろい構成だと思います。主人公が亡くなる前に、思い出の地を訪ねる夢を見ていたということで、たぶんいいはず。
夢らしい場面もありますが、臭いも温度も細かく描写され、たぶん建物や風景も現実のものと同じ。
どこまでが夢で、どの部分が主人公の身にかつて実際に起こったことなのか、判別しにくい書き方になっています。

タイトルは、地名です。実際に起こったバス転落事故を作品に取り入れていて、当時の新聞記事も使っているそうな。
記憶に新しい出来事を題材にすれば、読者の中には不謹慎だとか軽々しく取り入れないで欲しいとか、不快に感じる人もいるかと思います。
この事故は、百人以上が死んでいるとはいえ、半世紀くらい前のことですからね。私もこの本を読むまで、聞いたことすらなかった。
これだけ時間が経っていると、「そんなこともあったんだな。痛ましい事故だな」と思うだけで、もやもやはしません。

夢と現を行き来する主人公に取り残されてしまった一人息子は、なかなか複雑な気分でしょう。
たぶん、母親のことは最後まで理解できなかったのではないかと。

作者の年齢を考えると、ずいぶん若くて軽い語り口です。もちろん硬い言葉も出てきますが。


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うなぎの元気・本気・勇気

うなぎパイの歌。
長細いですが、開封前に3つか4つに割ると、一口サイズになります。パイなので、開けてから割るのはお勧めしない。

うなぎが入っている=精がつく=52歳、妻を喜ばせたい(サントリーのネット広告) という。

140723_2041~01

↑静岡駅にどーんと貼ってある広告です。昔風の棚ですね。祖父の家にも、食卓の後ろにこんな棚があった。
ちなみに、同じくらいのサイズで不妊治療クリニックの広告もあります。
パネルなので、後ろの看板も写っていますね。「こっこ」も、静岡銘菓です。
個人的には、大砂丘のほうがいいと思うんですが。

以上、犬とも本とも関係ない話題でした。

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吉村昭  「炎のなかの休暇」 (新潮文庫)

吉村昭  「炎のなかの休暇」 (新潮文庫)
終戦直前の戦争中の暮らしと戦争直後の暮らしを描いた短編集。
強烈だったのは「虹」。ロシア革命で祖国を追われ日本に亡命してきたロドルフ一家が主人公の家の近くに住んでいた。戦争が始まる。ロシア人は敵国人として扱われる。懸命に日本人と融和しようとロドルフ一家はつとめる。しかし、学校で、息子アレクサンドルは石をぶつけられたり、強烈な排撃、いじめにあう。
 だんだん戦局が厳しくなると、スパイの嫌疑がかけられ、刑事や警察の監視下におかれる。
でも、彼らは祖国を追われているので、もはや行くべき先がない。
 アレクサンドルが学校の担任にみんなの前で、「お前はロシア人だ。」と言われた時、
 「いえ 私は日本人です。」と強く答えた姿が痛々しい。
この作品のほかには「白い米」が素晴らしい。戦争直後の素朴な人々の生活、心情がよく書かれているし、当時18歳だった吉村のありのままの青春が素直に描かれ佳品である。


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吉村昭  「遠い幻影」(文春文庫)

吉村昭  「遠い幻影」(文春文庫)
会社を定年退職し、社会人として自由の身になると、今までは見向きもしなかった、小学校や中学校のころの同級生たちと交流が再開する。
 時々、幼かった頃のことを夢でみることがある。そうすると、それは夢だったのか本当にあったことなのか、気にかかりだす。年をとると、その気にかかっていることをどうしてか知らないが、真偽を確かめたくなる。それで、小学校や中学校の同級生との交歓の場ができるのかもしれない。
 この本は、吉村晩年の短編集。死がそこにだんだん迫ってくる。死ぬ前にあのことは幻だったのか真実だったのか、確認しておきたい。その心情と行為が「遠い幻影」で抒情的に描かれる。


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田村優之  「青い約束」(ポプラ文庫)

田村優之  「青い約束」(ポプラ文庫)
ポプラ文庫で過去最も売れた作品だそうだ。
水と油。交わることが決してない事柄を並行に走らせてしまい、失敗している作品。
この作家は、多分金融アナリストから作家へ転身したのではと思われる。だから、どうしても物語で日本の金融、国債増発の危険を主張したくてたまらなかったのだと思う。
 この金融論と、高校のとき遭遇した、純子との恋愛で主人公がしゃべったちょっとした発言が純子の自殺へつながる悲劇が全くまじりあわない。
 悲劇だけを過去から現在、未来につながってゆく物語にすればよかったのであるが、金融論のだらだらした展開をいれたため、非常に読みにくい小説になった。


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江上剛  「告発者」 (幻冬舎文庫)

江上剛  「告発者」 (幻冬舎文庫)
みずほ銀行を念頭に書いた作品なのだろう。
銀行というのは、個人と直に接しているが、個人が銀行に立ち向かっても、びくともしない巨大組織である。銀行が揺らぐのは、リーマンショックやサブプライムローンのようなグローバルな金融の輪の中にはいり、その鎖が切れたときである。それは、我々には預かり知らない世界である。まして揺らいでも、国が公的資金を投入、救ってあげる場合が殆ど。
 従って、銀行内部の派閥や人事抗争は、銀行を含めた金融関係の一部には関心があるだろうが、それ以外の人々には全く関心を持てない。
 本作品もはっきりどうでもいい類の作品。しかも、銀行の派閥抗争の基底に流れるものが女性記者とのスキャンダルというのでは、関係者以外には勝手にしてくれという作品。江上剛の見識を疑う。


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群ようこ 「それなりに生きている」

動物ネタの多いエッセイです。
もちろん、猫たちのエピソードも面白いです。迷子札を付けられてしまった、「おしゃべり」というニックネームの高齢ネコの話は、なかなか微笑ましい。
亀がたくさんいるという四天王寺も、ちょっと気になりますね。亀の池は有名らしく、ググったら動画も出てきました。

動物ネタより印象に残ったのは、群さんが、
「そいうえば、私は若いころから女らしい服が嫌いだった。
今、おじさんかおばさんかわからない姿になっているのは、そこに理由があるのだ」
と分析しているところです。
なんとなく、私もそうなるような気がする……(;´・ω・)

そういえば、群さんも向田さんも未婚ですね。

凛々しい(?)ゆめこ。年を取って色が薄くなりました。

IMG_1521.jpg


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自治会奮闘記

ある地方都市に新居を構えて20余年。とうとう、自治会長の役がまわってきた。12の班(組)、130戸の住居をまとめる役である。私の住んでいる地区は、5自治会を束ねた自治会連合会という自治会上部組織がある。
 3月はじめとうとう連合役員会への出席の召喚状が届いた。超憂鬱なる気分で出席。
自分の席をみつけて、座らないうちに、偉そうな老人から、「小林君は無職かね。」。何と不遜なるものいい。むっとしたが「無職です。」と回答。そしたら老人が「じゃあ、君は連合会の副会長をやってもらう。」
 なんだよ。副会長って。
会長はお飾りというわけではないが、どうも、会長のご意向に従い、連合会をとりまとめ、運営する役のようだ。後から確かめると、5自治会の自治会長のうち、現役で働いている人はたった一人。なんだ 完全に謀られた。
 憤懣やるかたない。うつうつとした日々を過ごす。
そして迎えた3月最終日。前の自治会長が楽しそうに軽トラで家の前に「最後の引き継ぎで~す。」とやってきた。
 わけのわからない書類が詰まったダンボール箱が5箱。それに、竹ぼうき3つをはじめ、普通のほうき、ちりとり、スコップにじょれん。ガソリンタンクなど。なんだこりゃあ。
 玄関に山のように積まれる。どう片付けていいやら茫然自失。
嫁さんにぶつぶつ言われながら整理していると、怒りがふつふつ。それが整理が終わるころになると、こうなったら自治会活動徹底的にやってやろうじゃないかとの何だか単純にファイトに変わって。
というわけで、読書の合間にときどきこれから自治会奮闘記をつぶやきます。よろしく。


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向田邦子 「霊長類ヒト科動物図鑑」

今日はこの組み合わせです。狭い。

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そして、お約束どおりももちゃんがスイッチを入れてしまう。暑そう……

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ぱっとしない天気です。天気に関係なく、休日は寝ていることが多いんですけれどね。
「どんより曇って低気圧がくるとだるい」 「朝から暑くて、汗をかいてしまった。だるい」 「朝から雨で気が重い」 
「昨日クーラーをかけて寝たせいか、朝からイマイチ」「昨夜お酒を飲むピッチが早かったかも」
「髪が乾かないうちに寝たからかも」
等々、理由は何でもありなのです。

そういえば、「ねこ・ねこ幻想曲」を描いた高田エミさんが、コミックスの柱部分で、
「パジャマを着たまま漫画を描ける人もいるみたいだけれど、私は無理です。一日中ぼーっとしてしまうに決まっている」
みたいなことを書いていました。
私も無理です。普段着もけっこうよれよれですが、一応着替えないとやる気が出ません。

さて、「霊長類ヒト科動物図鑑」です。
向田さんは屁理屈をこねる傾向が、子供のころからあったそうな。原稿が書けない時の言い訳に笑いました。
「今日は煙突が見えないから駄目だわ」=曇っていて頭痛がする。これは、アリでしょう。
「頭がかゆいの」 ん?
「パンタロンのゴムがきつくて書けないの」 んん?
ストッキングを引きずったままテレビ局を歩いてしまったり、懐中電灯を探すのに懐中電灯がもう一つ必要だと思ってから矛盾に気づいたり、面白いです。
回想に登場する家族も、なかなか癖のある人だったようです(・▲・)

あとがきでも触れられていますが、
「飛行機に乗る前はわざと部屋を片付けずにおく。万一のことがあったとき、きれいに片付いた部屋を見られたら、『ムシの知らせがあったんだ』と言われそうで~」
と書いた人が、飛行機事故で亡くなったんですね。

そういえば、オーストラリアのほうで墜落したマレーシア機はどうなっちゃったんだろうか。


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吉村昭  「遠い日の戦争」(新潮文庫)

吉村昭  「遠い日の戦争」(新潮文庫)
戦争末期、米軍の日本本土空襲による一般人殺戮はすさまじさを極めていた。その空襲のなかで、米軍機も日本軍に撃墜されパラシュートで降下し、日本の捕虜となる米軍兵士がいた。
 主人公清原琢也は、8月15日の終戦の日、上司の命令で米軍捕虜一人を処刑ということで、軍刀で首をはね、殺した。戦後、戦前の価値観はひっくりかえり、捕虜米人をひっぱたいたというだけで戦争犯罪人にされ、連合軍裁判で絞首刑にされた。
 当然清原も逃亡した。そして姫路のマッチ製造工場の運搬人で採用され、2年間安全に過ごした。故郷への郷愁が強くなり、仮名であるが、自分が元気で暮らしていることを年賀状で故郷に送った。筆跡をみれば仮名でも清原が書いたとわかるだろうと思って。
 それを受け取った父に、MPや警察の厳しい追及がその頃行われていた。そして父は犯罪人幇助の罪で投獄された。父はその屈辱に耐えきれず、警察に清原の年賀状をさしだす。それによって清原の居場所がわかり清原は逮捕される。そして全く理不尽な戦争犯罪裁判を受ける。
 同じテーマ、同じ事件を扱って遠藤周作が「海と毒薬」を書いている。遠藤はキリスト教
に沿って、事件をみつめ、彼の想像を作り上げ、扇情的に物語を創作した。
 吉村はあくまで事実をほりさげ、その枠内で、彼の想像を入れた。ここに吉村の物語への
信頼が生まれる。それでいて、読者の心には深く戦争犯罪裁判のむなしさ、憤りが刻まれる。

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