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2014年01月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年03月

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 「時間の習俗」 松本清張 

松本清張  「時間の習俗」(新潮文庫)
「点と線」で活躍した三原、鳥飼警部補と老刑事がまたまた活躍するミステリー。清張は特定の刑事や探偵を何回も登場させシリーズにすることを嫌う小説家でこれは非常にめずらしいケース。
 この小説の面白さはそのトリックと事件が起きた時代背景。
写真はまだカラーがでたばかりで白黒がほとんどすべての時代。その時代は町のDP店ではカラーの現像ができない。それで、カラーの場合はすべてフィルムメーカーに写した
フィルムを送って現像してもらっていた。当然できた写真はネガといっしょに依頼主に郵送される。
 ところがこの作品では犯人が直接とりにくる。その時に身分証明書がいる。今はみんな車を運転するものだから証明は免許証になるのだが、当時(昭和35-6年)は定期券が身分証明として使われていた。
 この2つが組み合わさったトリック。セピア色でなつかしい。

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「火の虚舟」 松本清張 

松本清張 「火の虚舟」 (ちくま文庫)
自由民権運動の指導者、東洋のルソーと言われている中江兆民の人生を描く。
自由民権運動と国会創設で有名な板垣退助、ここで国会が生まれるという正念場のとき、フランスへ留学にゆく。自由民権運動に手を焼いていた、伊藤博文、山縣有朋らの政府が留学費用をだしたのではと言われている。これで、板垣は政権にとりこまれる。多くの活動者が弾圧に苦しみ、それでも運動を続けているのに、板垣は裏切り自分だけ安全圏に逃げた。
 中江にも同じ匂いがする。思想より金。いつからか、政府と利権企業の間にたつ人間になる。直接利権企業からお金を政治家、官僚が受けると賄賂。だけど、間に関係ない人間。団体をいれると政治献金となる。
 こういう人間を昔は、黒幕とかフィクサーと言われた。今は、有識者とかコンサルタントと言われる。

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 「増上寺刃傷」 松本清張

松本清張 「増上寺刃傷」(講談社文庫)
武士物初期短編集。
武士を扱いながら現代人の屈折した心理行動を扱う。
綱吉、側用人柳沢吉保は生類憐みの令を布告。のみもしらみも殺生してはならない。殺生がわかると重罪として罰せられる。
 吉保につかえていた主人公の下男が、お腹がすいて庭にいた雀を捕り、焼き鳥にしてたべようとした。主人公の庭で雀が捕獲できればよかったのだが、往来まで追って捕獲。
 それが見つかって捕まってしまう。下男のことだから主人公には類は及ばないと思っていたが、職をとかれ今で言えば追い出し部屋に送られる。
 でも何か月か我慢すれば復帰できるとじっと耐えていたがまったく気配もない。
吉保を動かすためには相応の賄賂が必要だったから。

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「愛の矢車草」橋本治

BANANA FISHで有名な吉田秋生さんを含め、4つの短編に4人が挿絵を描いています。
吉田さんは、今よりも線が太いというか、素朴な感じの絵です。

若くて軽い女性の描かれ方がけっこう極端でした。
一話目は、「キャピキャピの女子大生」とあらすじにもありますが、何をしゃべってるのかわからない。
三話目に出てくる、カカリチョーと不倫している娘も、興奮して吠えまくっている小型犬のよう。
ただ、三話目の主人公や、四話目に出てくる母親のセリフや考え方(キャラクター設定?)はすんなり入ってきました。やっぱり、ドタバタ劇を演出するため、若い女性のバカっぷりを強調しているのかも。

パンティ泥棒が、
「あの女は下着を盗まれたいと思っていた。俺にはわかる。
同じアパートに住む他の女は被害に遭っているのに、自分だけ盗まれたことがない。「あなたも盗まれたの?」「困ったわね」という会話に入っていけない。被害に遭わないのは、自分がブスだからじゃなかと考えていた。
盗ってほしいが、目立つような干し方はできない。あの女の干し方には、その迷いが現われていた。あの女の寂しさがわかった俺は、盗んであげたのだ」
と偉そうに語る話は面白かったです。
私はセクハラにも痴漢にもあったことはないですし、なくて幸せだと思っていますが、話題に入れずもやっとする機会はありました。

4つとも、題材としてはいいと思います。
女子大生の話は、平成が舞台でもラノべっぽく書けそう。ちょっと下品だろうか。でも、さいきんはぶっとんだエッチいものもあるようだし……。
吉田さんが挿絵をつけている、小学生が父親になってしまう話も、シリアスなマンガにありそう。そういえば、コドモのコドモとか、14歳の母とか、数年前に話題になりました。
なかなか癖のある文章を書く方で、説明しすぎだったり強引だったり、どれもすっきりしない感じで終わってしまいました。
どの作品にも「寂しさ」が関係していたと、読み終えて一日たった今は思います。

橋本さんの本では他に、「つばめの来る日」と「蝶のゆくえ」を読んだことがあります。前者は男性を、後者は女性をテーマにした短編集ですが、つばめのほうが面白かったです。
連城さんと同年生まれですが、より男臭い話を書く人です。連城さんのほうがやっぱり巧いなあ。

ちなみに、私は大学時代も今も「ぴあ」は見たことがありません。

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「史観宰相論」 松本清張 

松本清張 「史観宰相論」(文春文庫)
明治以降、いろんな宰相が日本にはあらわれたが、その礎となり最も宰相の名にふさわしいのはこの本を読むと、大久保利通と山縣有朋となる。
 維新がなって明治時代がくる。しかし、最初のころは、まだ藩主の力が圧倒的に強く、日本の中にいろんな国が存在している状態。
 その藩主に対抗して行ったのが2つ。廃藩置県と徴兵令。廃藩置県は当初領主の数だけ県をつくったが、それを領主の勢力地域とは関係なく現行の府県にした。
 藩主が持っている武士を、無視して国として徴兵を行う。
これらは、中央集権国家を作るとともに、官僚制を敷くことを目的としている。
 山縣は軍隊を作りこれを組織化する。軍隊を政治から切り離し、天皇直属の組織として
思想や国民世論と独立した機関とさせた。さらに、国会の上に枢密院なる組織をつくり
国会で議決した法令を、枢密院で最終採否を決定するようにした。
 また、各地にあふれていた武士たちの失業対策もかね、警察組織を作り上げた。

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 「象徴の設計」 松本清張

松本清張 「象徴の設計」(文春文庫)
明治11年、西南の役をやっと鎮めた明治政府。極度の財政難に陥り、西南の役での論功行賞は幹部将校にはあったものの、一般兵にはなく、加えて兵役費や公務員費を削減する政策を実施。こんなときに陸軍総帥山形有朋は1万八千坪の邸宅を造る。
現在の椿山荘である。金はどこから?権力を使っての強奪?
いずれにしてもこんな人間に、和とか人への信頼、絆を求めてもしかたがない。不信をベースにした国家及び陸軍、統治組織ができてゆく。
天皇を人間の上におく。彼の言葉は全知全能で、人間は絶対に従わねばならない。
軍に属する兵は、上からの指示命令は絶対服従で、意見はのべてはならない。
 それから山縣の一番重要な政策がスパイ起用策。自由民権運動のあらゆるところにスパイをおき、その情報を得て弾圧をする。
 この山縣の政策が、日本国家に根をはり、やがて第二次大戦の悲劇へ結びつく。
大隈重信が亡くなったときは国民葬で、別れの葬式には何万という国民がやってきた。山縣は国葬。列席者はわずかで非常にさみしい葬式だった。

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 「火の縄」 松本清張

松本清張  「火の縄」 (講談社文庫)
この小説はよくわからないところが大きなところで3つある。
光秀が秀吉に討伐される経過はよくわかるが、突然章が変わると、秀吉と家康が向かい合い戦いとなる。いわゆる小牧 長久手の戦いである。家康と秀吉が向かい合う背景がわからない。何のための戦なのか。
 細川忠興と鉄砲使いの名人稲富伊賀との確執がなぜ生じるのか。ただ体つきとか
肌があわないだけでは物語としては弱い。
 清張は稲富伊賀を鉄砲技術だけで戦国を生き抜いたが、人間的に救われない人間で、いかにも哀れで切ない人生のように描くが、その技術故、あちこちの大名からは高くかわれ
最後は家康までたどりつく。とても不幸せな人生のようには思えない。

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 「刑事の子」 宮部みゆき

宮部みゆき 「刑事の子」(光文社文庫)
東京ゼロメートル地帯というところが大雨や台風がくると昔はよく災害地としてニュースになった。江戸川区、墨田区、荒川区、ディズニーランドのある浦安もその地帯である。
 宮部はゼロメートル地帯で生まれ、育ち、この場所を舞台とした作品が多い。
 ゼロメートル地帯は小さい頃ニュース映画でみたが、粗末な長屋がたくさんあり、ぼろ家が浸水し、小船で通行していた。貧乏くさくて哀しいところだった。
 ゼロメートル地帯は東京大空襲で集中的に空襲され完全に破壊された地帯だ。だが、今やディズニーランドをはじめウォーターフロントとして開発され、近代的マンションやアウトレット、高層ビルディングが立ち並ぶ先進的地帯に生まれ変わった。
 この物語は、大空襲時代の人と、先進的地域に住む人殺しもゲーム感覚な人が結びつき起こした事件を、まったく陥没し存在さえなくなりそうなゼロメートル長屋で生まれ育った人たちが、事件を解決してその存在をみせつける物語。
 宮部は清張が好きだ。物語は清張の「疑惑」をモチーフにしている。

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 「誰にでも書ける一冊の本」 萩原浩

萩原浩 「誰にでも書ける一冊の本」(光文社文庫)
自分史をあるところはデフォルメして、小説として書く。ちっぽけでも意味のない人生はないのだからだれでも一冊は本を書ける。本当だろうか。
主人公の父は面白いかは別として書いたし書ける人生があった。北海道開拓、戦争の悲惨な体験、戦後の炭鉱での仕事、炭抗縮小廃坑に対しての闘争。
 でも能力はともかく自分の人生が物語になるような人生を送ってきた人はどれだけいるだろうか。今思うと、人生の70%をしめた会社人生などはあっというまに過ぎ、とても物語になるようなことは何もなかった。
 父には物語はあった。でも、今ある人生は何とも平凡な人生だけだ。

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 「トモスイ」 高樹のぶ子

高樹のぶ子 「トモスイ」(新潮文庫)
ずいぶん久しく高樹の作品に出合わなかった。高樹は私より少し年上。だけどほぼ同世代。
僕らが高校から大学へ行く頃、アジアはとても遠かった。韓国は朝鮮戦争の名残が色濃く、今の大統領のお父さんが独裁軍事政権をひいていて一般日本人は旅行が難しかった。
 中国は毛沢東の時代。文化大革命。韓国以上に遠い国だった。ベトナムは解放戦争の真っ最中。その余波はカンボジア、タイ、ラオスの国々に広がってていた。
 だから、海外はやはりアメリカでありヨーロッパだった。
 そんな作者が、40年以上も前の、アジアに思いをはせながら、まさに今のアジアに浸って紡いだ短編集である。
 それにしても奥付けをみたら新潮文庫4冊しか高樹のぶ子の本がない。20冊近くは新潮文庫にはあったはず。全部絶版か。さみしい。

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 「幕末の動乱」 松本清張

松本清張 「幕末の動乱」(河出文庫)
歴史物は、いつも人物論に終始するからどうも面白くない。戦国も幕末も宰相、リーダー、参謀、彼らの役割、戦略は?こんなものばかり。
 どうして戦国時代がきて100年にもわたる内乱の時代がきたのか。日本発展のなかで戦国時代はどこにあたっているのか。それぞれの部族、領主はどうして生まれてきたのか。
 時代背景は?
 江戸時代は、それ以前の時代と比較して何が異なるのか。江戸初期、中期、末期と比較して何が異なってきたのか。鎖国ということになっていたが実態はどうだったのか。松前藩や薩摩藩、長州藩はおおっぴろげに貿易をしていた。田沼意次の運上政策というのがある。これは、商人や藩から冥加金、今で言えば税金を徴収する政策。
貿易は莫大な利益を生み出す。それで冥加金も莫大になる。だから貿易を禁止などできない世の中に江戸中期はなっていた。
 ペリーの黒船来襲は、実は幕府はその一ヶ月前から知っていた。

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「松本清張の日本史探訪」 松本清張 

松本清張 「松本清張の日本史探訪」(角川文庫)
奈良東大寺の大仏の総工費は今のお金に換算すると4500億円。
投じた延べ人数2,603,538人。これはどこかで知りたい。どうして最後の1桁まで人数がわかるのか。本当だったらすごい。
 そして大仏が完成した年、山上憶良の「貧窮問答歌」が生まれた。

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 「月光」 松本清張 

松本清張  「月光」(双葉文庫)
清張初期の短編を中心に収録。
清張の初期の作品は清張の生きざまが作品に色濃く投影していてずしっと胸に迫る。
最後の「背広服の変死者」が素晴らしい。
主人公はある大手の新聞社広告部の校正係に所属している。広告部の端で、窓もないようなところに係はあり、裸電球の下で仕事をしている。校正係は「会社の縁の下の力持ち。目立たないけどなくてはならない職場である」と係員には思っている人もいる。
 でも校正係にいては、出世の望みはないし、仕事もうねりもなく淡々。主人公、何回も上司の面談で異動を申し出るのだが全く実現しないまま30半ばになる。
 部の忘年会では、他のテーブルでは部長が歓談を長くするが、校生係のテーブルは形だけの励ましがありすーっと通り過ぎるだけ。
 30半ばで未来の点、定年が何もなく到達できることが完全に見えてきた。それと同時に
生きることへの喪失感が襲ってきた。
 校正係がいやになり辞めていった人間もいた。で、でていっても変わらず新聞社に頼ってくる。文房具商社に副社長として引き抜かれていった人。文房具を当然その商社から購入してくれるものと思い横柄な態度で接してくるが、調度係は鼻にもひっかけない。そして商社からは首にされる。かように、勢いでやめてみても、世間の冷たさにあおられるだけで幸せをつかんだ人はなく、惨めで苦しい生活をしている人ばかり。
 本当に清張はサラリーマンをよくわかっている。きっと彼も朝日新聞に勤めていた頃こんな気持ちいっぱいで暮らしていたのだろう。よかった、作家になれて。

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「美徳のよろめき」三島由紀夫

「パスタマシーンの幽霊」に登場した作品なので、読んでみました。

難しかったです。文章自体は別に難しくないし、登場人物の心理もなんとなくわかるのですが、「正しい」解釈があるような気がしてならない……。
高校時代の現代文の先生に解説してもらいたいと思いました。
で、テストでは、
「次の語句の意味を書きなさい。1)道徳的瑕瑾 2)精励恪勤」
「タイトルにある『美徳』とは何か、あなたの考えを書きなさい」
「節子が聖女に例えられているのはなぜか」
「節子が夢遊病患者に例えられているのはなぜか」
みたいな質問があるはず。

貞淑な人妻が不倫をして、三回も中絶(ただし、うち1人は旦那の子)して、最後は別れる話。
旦那にはばれないし、子供への後ろめたさもあまり感じないし、同じように不倫をしている女友達には全部しゃべっちゃうし、別れる時も大してもめない。
自分が思うほどには男が自分を思っていないということを分かっていて(いや、どうだろう……)、自分が月経中でできないときは、旦那にもしてあげなかったような奉仕をする。肉体でつながっているという自覚がある。
男の方は、面倒くさいヒロインにうんざりしているところがあり、向こうから別れを切り出してくれてラッキーと思っている。ただし、俺も別れが辛いんだということをもっともらしく長々としゃべる。
まぁ、そんな感じです。そんななまぐさそうな内容なのに、上品です。

あとがきには、
「『聖女』の意味が不幸にして汲み取れない読者は、日本に数少ない耽美主義的作家が精緻な技巧を凝らして作り上げた、極度に人工的な美の世界には、残念ながら無縁の衆生だという他はあるまい」
とあります。
もう私、残念な人間でいいや。

ところで、耽美ってなんですか?

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 「空白の世紀」 松本清張

松本清張 「空白の世紀」(講談社文庫)
まだ日本に文字がなく、記録ができなかった時代。日本人はどこからやってきて、どう国が形成されてきたのかを推理する作品。
 「魏志倭人伝」やら「日本書紀」を駆使して推理する。そのため長い頭にはいらない、怪人みたいな人間がたくさん登場し、なんだかついていけない。

by はなゆめ爺や

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 「宮部みゆき選 松本清張傑作短編コレクション」 松本清張

松本清張 「宮部みゆき選 松本清張傑作短編コレクション」 (下)(文春文庫)
「火の記憶」が印象に残る。昭和28年の作品で、まだ純文学を志向していた時期でミステリーは書いていないときの作品。その後の名作「張込み」の下地になる作品である。
 清張は父が博打や仕事に失敗して貧乏な少年時代を送った。だから12歳で社会にでた。
そこから、強烈な反抗心と我慢、それを克服するための自己研鑽を懸命に行い、42歳で作家として世にでるきっかけをつかむ。
 この清張の辿った道が貴重である。
今の世でも、貧乏や荒れた家庭に生まれ、学ぶことから離れて社会に放りだされる若者はたくさんいる。しかしそのすべてが荒れたままで彷徨して毎日を送る。清張のような人間はでてこない。(強いていえば西村賢太が清張に似ているか)
 だから、初期のミステリーを描いていない頃の、自らの生活体験が色濃くでた作品は貴重である。「火の記憶」で母と出奔した父を訪ねるときのボタ山の自然発火した帯のような火の流れが悲しく美しく描かれる。

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「棲息分布」 松本清張 

松本清張 「棲息分布」(上) (文春文庫)
松本清張 「棲息分布」(下) (文春文庫)
この小説は、組織の行動と個人の正義は時に異なることがあることを指摘している。
最近の会社は従業員に悪いことは隠さず告発するようにとしきりにすすめているポーズをとる。もちろん、その告発が会社の正義と合致すればそれは有益ということになる。しかし、しばしばそうはならず、告発者が会社によって追い詰められることも起きている。
 会社も組織も、告発なんかで傷がついてはならないのだ。

by はなゆめ爺や

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ゆず、ゆず、ゆず

柚子をいただきましたアゲイン!

そしてまた作りましたよ、柚子ジャム
レシピには
「果汁+皮の重量と同量の砂糖を使うのがクラシックレシピですが、私は9割にしています。」
とありましたが・・・
9割の砂糖てのもトンデモナイ量・・・

で、それよりさらに砂糖を少なめにして作ったところ

IMG_1082.jpg


お口に入れると
あっま~い
そして
ゆず、ゆず、ゆず~っと柚子が主張するのです
つまりはとってもオイシイ~シアワセ~


さらにシアワセになるために作ったのが
パウンドケーキ


IMG_1091.jpg

これはバターじゃなくてサラダ油で作りました
なので甘さもすっきり感があり朝ごはんにもいけます

まいう~

いろいろ楽しめる柚子ですが定番はやっぱりこれでしょう


IMG_1087.jpg



寒い夜にはこれこれ!
ほっこり暖まるんだよね

はぁー、満足!

ごちそうさまでした!

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 「状況曲線」 松本清張 

松本清張  「状況曲線」(上)(新潮文庫)
松本清張  「状況曲線」(下)(新潮文庫)
事件は東京、岐阜山奥、京都とあちこちで起きるが、事が動き出すのが、浜松の奥地にある船明ダムで水死体があがってから。二俣署の矢田部、山崎両刑事の執拗な捜査と機略により事件が解決へと向かう。船明ダム周辺がきめ細かく描かれており、清張はこんな山奥まで来て、作品を書いているのだと感心した。
 ただ、それにしてもトリックがいつものように大袈裟すぎ現実感が乏しい。
岐阜の山奥で殺した女性を、京都のラブホテルで殺されたようにみせかけるため、死体をコンクリートミキサー車の漏斗にいれ、殺人時間をごまかすため、湯に浮かせ、ミキサーをまわす。それだと死体にミサーの刃がからんで傷つけるため、寝袋にいれ宙づりをしておく。更に、その死体をラブホテルに運び込む。ホテルのまわりは2m以上の壁がある。鉄パイプで櫓をくんで、さらに死体をロープで宙つ゛りして滑車でつりあげる。

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「遠くからの声」 松本清張 

松本清張 「遠くからの声」(講談社文庫)
タイトルにもなっている「遠くからの声」が好きな作品。
姉の縁談が決まる。ところが姉の相手を妹も大好きになる。それで、妹はずうずうしくデートのときも、新婚旅行にもついてくる。姉はうるさく思うし、疑心が妹にもたげる。しかし、本当は姉思いの妹の姿がそこにあった。
 結果は悲しい物語になったが、妹のいじらしさが作品に楽しい明るさを醸している。太宰の「女学生」を彷彿とさせる。

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「殺意」 松本清張 

松本清張 「殺意」 (光文社文庫)
幼いころから仲がよい男2人がいる。それが同じ会社にはいって、仲の良さは続いている。
一人は重役目前の部長。もう一人は厚生課長。地位は大きく異なっても、酒を酌み交わしたり、冗談を言い合ったり、まわりからみても羨むほど仲がよい。
 部長が殺害される。容疑者は親友だった厚生課長。
動機は?
 小学校のとき部長は天才と言われ、課長はいつもへつらう子分。部長は一流大学を卒業。
会社に入っても順調な出世。一方子分は同じ会社の課長どまり。みためは大親友だったが、子分は人生の長い間、部長には恨みだけが醸成される。鬱屈、屈折。それが最後に殺人へ。
 男の友情。長ければ長いほど、親分、子分の関係だけが残るのかもしれない。

by はなゆめ爺や

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 「宮部みゆき選傑作短編コレクション」 松本清張

松本清張 「宮部みゆき選傑作短編コレクション」(上)(文春文庫)
宮部みゆきは本当に松本清張を崇拝、敬愛している。そして、現在の宮部ワールドも清張を基礎にしてできあがっている。文春で500ページ以上にわたるコレクションを3巻だしていて、更に新潮でも宮部みゆき選清張コレクションをだしている。
 この作品集の中で最も好きな作品は「真贋の森」。
自分は実力があると強烈な自負があるのだが、実力もないくせに、政治力で権威をこしらえ君臨しているやつがいて、結果自分はその勢力からはじかれ、うつうつとした貧乏で孤独な人生を歩んでしまっている。全く理不尽このうえない。
 偽りの権威を何とか策を弄して、世間に暴いてやる。そんなことばかり考えて毎日を暮らす。それで、あるときその策を実行する。90%までいつも成功するのだが、残り10%で破綻。更に今よりもっと奈落におちるか、自分で自分を抹殺するに至る。
清張得意のパターン。
 わかっているのだが、いつもはまってしまう。
暗い少年から青年時代。いくら売れる作品を世にだしても、文壇や文学世界からはちっとも評価されない。古代史、昭和史を独特の視点をもって論じても、学会からは誰も相手にされない。
 そこから生ずる屈折感、敗北感、その権威にたいする怨念がまた傑作を生み出す。


松本清張  「宮部みゆき選傑作短編コレクション」(中)(文春文庫)
「式場の微笑」にすこし驚いた。昭和50年発表の作品である。
昭和50年ころというのは、会社では男は27-8歳まで、女性は24歳くらいまでに結婚するのが当たり前という風潮があった。
 だから30歳くらいで女性が独身でいると、その女性は職場からつまはじきにされ、暗く、いじけた存在になってしまう。そんな主人公の女性、着物着付けの免状をもっていた。
 知らなかったのだが、成人の日、晴れ着を纏った女性が多くいるが、式の後たくさんの
カップルがラブホテルに行き、帰るときになり着付けができない、そんな時、着付けをするアルバイトがホテルに雇われていて着付けをしてくれる。
 主人公の女性もそんなバイトをしていて、ある中年と成人女性の不倫カップルの着付けを担当した。
 ある結婚式によばれ、そのとき新婦と来賓代表できている新婦の会社の課長が、ホテルで着付けをしてあげたカップルだったことを知った。式がお歳暮時期にあたっていて、式の数日後豪華なお歳暮がその会社より主人公の家に届いた。それだけの話。
 ミステリーなら、この孤独なハイミスである主人公が、式で知った秘密を武器に課長や新婦を追いこみ、そこから事件発生となるのだがそんな雰囲気や恨みみたいなものは微塵もなく物語は終わる。
 どことなく後味が良い作品。普通の人々が描かれている作品である。

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 「黒い手帖からのサイン」 松本清張

松本清張 「黒い手帖からのサイン」(新潮文庫)
かの佐藤優がセレクションした清張の作品集。
信長の武将、丹羽長秀。木下藤吉郎がまだ自らの地位からはるかに低いときは可愛い奴と目を細めてみていたが、どんどん信長に取り入り出世してくる。何しろ信長を交えての武将会議のときも、他の武将は分をわきまえて、必要以上の発言はしないのに、藤吉郎だけは、憶面もなく発言をする。信長に叱責されてもペロっと舌をだすくらいのずうずうしさ。
 さすがに長秀も藤吉郎に追い抜かれるのではと不安になる。不安は他の武将にも現れ。藤吉郎を非難するものもでてくる。何人かの武将はこらえ切れずに信長に直訴。それらの武将はことごとく左遷の憂き身にあう。
 耐えに耐えた。でも抜かれてしまった秀吉に「ある所領をおまえに与える」といわれてとうとう切れた。それで最後は自らの腹から臓器をえぐりだし、臓器にたいして「この憎き秀吉め」といいながら果てた。

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 「時刻表を殺意が走る」 松本清張

松本清張 「時刻表を殺意が走る」(新潮文庫)
日本政治思想史の大家、原武史の清張セレクション。
タイトルからわかるようにまず「点と線」が収録されている。
収録作品はすべて既読。
この中では「顔」が最も面白い作品。私の大好きなミステリー作家パトリシアハイスミスの「見知らぬ乗客」に物語は似ている。

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「パスタマシーンの幽霊」川上弘美

短編集です。どれも味があってよかったです。
「センセイの鞄」しか読んだことがなかったのですが、純文学(たぶん)なのに読みやすい。

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気に入ったのは、次の3つ。
「ほねとたね」
女子高生の心に、恋じゃないけど何かが残るという話。私の親世代なのに、十代の女の子のもどかしい気持ちや衝動を描くのがうまいです。
「ナツツバキ」
男性との交際経験がない、ベランダ園芸に凝っている女性が、コロボックルの男性と恋をする話。好評だったのか、この二人は別の話にも出てきます。
高尾山は私も行ったことがあります。植生を気にする余裕はなかったですが。うーん……もったいない。(11/7の日記参照?)
「海石」
読んだとき、下の図を思い出しました。

140215_1322~01

最初は雌がいて雄を次々に引き寄せ、下の層にいる(雌に接している)雄から、雌に性転換していくそうな。
スティーブン・ジェイ・グールド「フラミンゴの微笑」に出てきます。
海の中には繋がって重なって生きている生き物がけっこういるようです。中には、それぞれが決まった機能に特化してしまい、集まって一つの個体みたいになっているのもいるんだとか。

どうでもいいですが、私も川上さんと同じく理学部生物科出身です。お茶の水じゃないけれど。

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「憑かれし者ども」 松本清張 

松本清張 「憑かれし者ども」(新潮文庫)
桐野夏生が選んだ中短編5編。4編は既読。
名作「鬼畜」も所収されている。妾の菊代が3人の子供を抱えて、宗吉の家に乗り込む。それからの宗吉の妻、お梅と菊代の恨みが陰にこもっての痛烈なやりとり、その間にたっておろおろする気の小さい宗吉。迫真、息をのむ場面は清張の多々ある作品の中でも最高傑作のひとつ。
 「赤いくじ」戦争直後の朝鮮にアメリカ軍がやってくる。そのとき残留日本婦人の中からくじびきで米軍人用慰安婦を20人選ぶ。でも米軍は慰安婦の要求はしなかった。しかし選ばれた20人は、日本への引き揚げ道中、みんなから売春婦としてさげすまれてみられた。モーパッサンの名作「脂肪の塊」を彷彿とさせる。

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 「彩り河」 松本清張

松本清張 「彩り河」(上)(文春文庫)
松本清張 「彩り河」(下)(文春文庫)
結構面白い。3つの要素が物語で流れる。
企業に寄生して生きるブラックジャーナリズムの特質。相互銀行がサラ金を大きな融資先にするため、サラ金を大蔵省認可の金融機関にさせる、そのための政治家や大蔵省と相互銀行の癒着。相互銀行経営者の銀行の私物化。
 この3つの要素がからみあって、変死、殺人事件が多発する。
昭明相互銀行の重役をおり、高速道路料金所の係になっている井川がどうして多殺事件の真相に迫らねばならないか動機に納得できない弱さはあるが、物語はよくできている。
 この作品でジョーとよばれる銀座の夜の交通整理をしている男がでてきて、最後にこの物語で最も重要な役割を果たす。このジョーが清張の苦難の青春時代の姿とダブル。

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 「日本中枢の崩壊」 古賀茂明 

古賀茂明  「日本中枢の崩壊」(講談社文庫)
犬の散歩にでると、年ごとに休耕田や荒れ果てた元畑が増えてゆく。農業をおこなう人口が急速に減少、高齢化が進んでいるからだ。
 何とか休耕作地、荒地を復活できないかと思う。例えば、レストランや割烹、あるいは居酒屋などが、これらの土地を借りて自ら使う食材を雇用者を使って作れるようにしたら
どうだろうかなんて思う。
 この本は、官僚のあほらしさを暴露したり傍観的に冷やかしたりするのではなく、内容もあつく、文章もしっかりした読み応え十分な本に仕上がっている。さすが、セルフガソリンスタンド法を勝ち取った元官僚だけのことはある。
 こういう人が官僚組織から追い出され活躍の場がないことは残念だと思う。

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「佳代のキッチン」 原宏一 

原宏一 「佳代のキッチン」(祥伝社文庫)
原ももう還暦をむかえる歳になったのだか。だから、へんてこな話、尖り狂った話は書けなくなったのだ。さみしいことおびただしい。
 この作品は、なつかしヒッピーが生まれて、消滅してゆく過程がたえずBGMとして流れる。そこが郷愁をそそる。
 京都、松江、盛岡、函館、ニセコといろんなところを巡る。しかし、街や風景が描かれない。別に旅をしなくても東京だけでこの物語は書ける。

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「聖獣配列」 松本清張 

松本清張 「聖獣配列」(上)(文春文庫)
松本清張 「聖獣配列」(下)(文春文庫)
作品の最初がどうしても違和感が強く残る。
主人公の可南子は、アメリカ大統領のバートンが10年前まだ大統領になる前来日したとき、情婦としてバートンと一夜をともにする。そして大統領になって来日したときにも情婦として選ばれ迎賓館でバートンに抱かれる。
 その日の深夜4時、バートンと日本の磯部首相との密談が行われる。その密談のため
両人があるいていた廊下の写真をこっそり可南子が撮る。
 この写真がその後可南子のゆすりの武器になる。何とこのネガでアメリカ大統領をゆすり、150万ドルをせしめる。また、この密談に通訳として立ち会った日本人、アメリカ人がスイスで変死する。更にバートンと可南子をとりもった政治家秘書もオランダで変死する。情婦があらかじめカメラを携帯している。彼女がアメリカ大統領を威嚇する。それに大統領サイドが応える。写真など公表されても全くその背景はわからず簡単にごまかせるのに。
 後半は非常に面白い。この面白さのために前半があまりに無理をしすぎている。
 

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