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有川浩   「別冊 図書館戦争Ⅱ」(角川文庫)

 「図書館戦争シリーズ」6冊目で最後の作品。

今回の作品では、柴崎に対する、ストーカー事件が物語の多くがさかれる。

まず、登場するストーカーは奥村玲司。図書館では、客の要望を聞いて、その要望に従い、本を紹介したり、それぞれの本の特徴を説明したりするリファレンスという仕事がある。奥村は、柴崎がカウンターにいる時を狙って、このリファレンスを強要する。そして、リファレンス中、食事や映画などにしつこく誘う。

 それでも、柴崎がすべて拒否するために、最後の手段として、借りた本を返却しなくなる。
返却の督促をすると、足を骨折したため歩けない。自宅まで取りにきてほしい。家でもリファレンスしてほしいので来るのは柴崎にしてくれと言う。

 何かアクシデントが起きたらすぐ警察に連絡するため、柴崎に一人が付きそう。
そして、柴崎が訪問すると、柴崎は奥山の結婚相手にされている。両親は嫁がきてくれたと、喜び最大級のもてなしで柴崎を迎える。

 ストーカーは、自分の妄想が、現実になることを確信し、そこに至るまであらゆる策略を行うのだ。

 もうひとつ、柴崎の寮の部屋に、水島というおとなしい同期の女性が入居してくる。
実は、水島は図書館業務部に配属されてから、柴崎の同僚の手塚に恋こがれていた。
ところが、手塚と柴崎がいつも仲がいい。何とか柴崎と手塚の仲を引き裂こうととんでもない画策をする。

 恋こがれるということは、相手がどんな仕草をしても、自分に都合よいように解釈して恋心をさらに募らせる。

 水島が手造りのチョコレートをバレンタインに手塚にあげようとする。手塚は
「そういうのは全部ことわっているからごめん」と受け取りを拒否する。
それに対する水島の気持ち。
「でも、」ごめんと言ってくれたし、言い方も冷たく無かったから。誠実でかっこよくて、私みたいに知らない地味な女の子がチョコを渡して断られたが、言葉は丁寧だった。
 だから少しは希望があるんだ。

それに手塚さんは誰のチョコも受けとらなかったし、誰が告白しても付き合わなかったから、それだったら私にもチャンスはあるんだ。だって私は一人でチョコを渡して、直接話しかけてくれた。そんなのは私だけなんだから。」

どうしてこんなに都合よく思ってしまうのか。でも、ストーカーの心境、行動がよく描けている。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有川浩    「別冊図書館戦争Ⅰ」(角川文庫)

 図書館戦争シリーズの番外編。別冊では、大きな戦いは起こらず、日常に起こるトラブルが描かれる。戦争というより、主人公の笠原郁と上官の堂上とのラブコメディの色合いが濃い作品となっている。この番外編はもう一冊出版されている。

 ラブコメディといっても、作者有川の思いがしっかりと盛り込まれている。

図書館に屯する中学生がゴミを散らかし、それを片付ける図書館特殊隊の隊員に「公僕」と掛け声をかける遊びが流行っていた。

 調べると「公僕遊び」は木島という作家が書いている本が発生元になっていることがわかる。「公僕」だけを捉えると差別語でもないし、辞書にも載っている。

 木島はインタビューに答えて言う。
「自分は、放送使用禁止語、新聞使用禁止、雑誌本使用禁止語を一切使うことなく、差別を表現している作品を書いている。」
 耳が聞こえない人を唖、目をみえない人を目暗、手を使えない人を片輪、足が使えない人をちんば。もともとこれらの言葉「耳が聞こえない人」というのが直截すぎ、差別表現になるため、それを和らげる表現として生まれた言葉。ここから派生して「片手間」「片手落ち」まで差別言葉として使用禁止になってしまっている。

 例えば、ここで言っていいのかわからないが、往来で指をさして「朝鮮人」と叫べば、明らかにヘイトである。差別である。しかし朝鮮人は普通に使われるし、使用禁止になっていない。使えなかったら新聞など発行できない。

 問題は、それらの言葉がどんな場合、どのような意図で使われるかによって禁止となるもので、その言葉が、全く差別の意図があって使われていないのなら、使用して問題ない。

 有川さんは、言葉をとりだして、使用制限、禁止にしている現状に大きな怒りを持っている

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| 古本読書日記 | 06:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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江刺昭子   「樺美智子、安保闘争に撃たれた東大生」(河出文庫)

 1960年6月15日安保条約改定に反対する学生デモが国会議事堂に突入、警官隊との衝突で東大生樺美智子が倒れ亡くなる。日本の戦後のデモ史上で死者がでたのはこの時の樺さんだけ。それだけに樺さんは人々の胸に刻まれ、哀しい犠牲者の象徴として今でも有名な女性となる。

 樺美智子さんは、優しい写真の印象から、今まで、当時の安保反対の盛り上がりの影響を受けて、デモに参加して事故か、警察の残虐行為に巻き込まれた普通の学生だと思っていた。
だから当時も、本当に可哀想な人、痛ましい出来事だと思っていた。

 事件後、樺さんの両親が娘さんについて、本を出版したり、発言したが総じて可愛い娘だったという発言で、それも私に樺さんが普通の学生だったとの印象を植え付けた。

 ところが、この作品を読んで、樺さんは小学校のときに驚くことに宮本百合子の「風知草」を読んで感動。その後宮本百合子の信望者となる。「風知草」は戦前治安維持法で捕まった共産党の宮本顕治が戦後釈放され、百合子とともに共産党再建にのりだしてゆく物語である。

 樺美智子さんの履歴。
「1957年東大に入学。ただちに全学連の反帝闘争に参加。灯台教養学部自治会委員長となる。反戦学生同盟に加盟。この入学の年日本共産党に入党。1959年に日本共産党を闘争方針の違いから、脱党。共産主義者同盟に加盟。全学連の安保改定反対闘争の指導的役割を担い、多くのデモに参加。過激な行動もする。」

 温和な容貌と異なり、当時の女子学生では筋金入りの闘士だったのだ。そして、そのことでメディアでは有名な女性だったのだ。
 事実運命の6月15日にも、国会突入デモの最中雑誌「マドモアゼル」の記者に取材をされている。樺さんはもちろん断っているが。

 何かこの本を読んでいると、樺美智子さんに抱いていた人物像が崩れてゆく。もちろんそれで樺さんへの歩んだ道の強さはいささかも減じないが。

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青山透子  日航123便墜落の新事実 目撃者証言から真相に迫る」(河出文庫)

 1985年8月12日日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落524人の乗員乗客のうち4名が助かり、520人が死亡した日本の航空機史上大惨事となる。

 墜落の原因は、修理ミスから生じた圧力隔壁の金属疲労により起こったと当時の調査から結論付けられた。

 この事故の経過がおかしいのは、墜落は18時28分に起こっているのだが、その墜落場所が不明のまま翌日になるまでわからなかったのこと。しかし墜落をたくさんの人が目撃していた。
その人たちから「現場は御巣鷹山だ」、と警察やNHKに報告するも、一晩行方不明のままにされたことである。

 さらに多くの目撃者が、日航ジャンボ機と並走して小型戦闘機が2機飛んでいた。それが、日航機と離れて自衛隊航空基地の方角に走り去ったことを目撃している。

 このジャンボ機の客だった小川哲さんが9枚の写真を撮っていて、その5枚目に窓から外を撮った写真に黒い物体が映っていた。
 しかも墜落後2機のヘリコプターがやってきて事故現場でホバリングをしていた。
つまり米軍や自衛隊は墜落場所を早くから知っていたことになる。

 著者青山さんは日航のキャビンアテンダントを当時していて、この便のキャビンアテンダントに友人がいたり、同期の方もいた。
 目撃証言を丹念にひろいあげ、米軍横田基地や自衛隊にも困難を極めるが取材も敢行し、

自衛隊のファントム機が何らかの事情で123便に対しミサイルを発射し、123便が墜落したことを突き止める。青山さん執念の調査である。小川さんが撮った写真の黒い物体は、その後の解析でミサイル弾とわかる。

 実は、ファントムに使われている燃料はジャンボ機と違い、酢が混じった強烈なにおいがする。夜のヘリコプターは、ファントムの燃料の匂いを消すために薬剤を撒いていたのではと考えられている。

 この作品で、もし直ちに救援が行われていたなら100人は救助されていただろうと書かれているし、あの国民的歌手坂本九も助かっていたかもしれない。

 日本では、一旦事故原因が、圧力隔壁の金属疲労と決定されると、その後何が新しくわかろうが、決定は覆されることはない。

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| 古本読書日記 | 06:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有川浩   「シアター!2」(メディアワークス文庫)

 有川はライトノベル作家として先頭を走る大人気作家。どの作家より、発想がつきぬけていて、内容も面白く才能あふれる作家である。有川は多分自分の作品こそが最もすばらしい作品であり、最も評価されるべき作品であると自負しているように思う。また素晴らしい作品を出し続けるために奮闘努力をし、ラノベ界ではかってない「空飛ぶ広報室」で直木賞候補になるところまで文学界での評価を高めてきた。

 想像するに、個性的で鼻柱が強い女性作家のように思う。

  この作品、演劇集団「シアター・ブラック」が2年間で、演劇を続けられるために司から借りた300万円を返済できないと、劇団は解散するという条件を打ち破るため奮闘する劇団の姿を描く。

 有川さんの性格が現れているのか、劇団の中はしょっちゅうトラブルが起きる。それは、誰もが、思っていることを口にだす。それがトラブルを引き起こし、時に物を投げたり、平手打ちが飛び交う。

 興行収入を大きくあげたいために次の公演は有名な大きな舞台で行いたい。そう監督の巧が思っていたところテアトルワルツにかかる劇の主演女優がトラブルで舞台をおり穴があいてしまったことを巧が知る。

 そこでテアトルシアターに電話をすると、支配人が面談してOKならば貸すといわれる。巧が面談に行く。少し年のいった支配人が現れる。彼が言う。

  「テアトルワルツは金をだせば誰にでも貸すというわけではない。成り立ちが文化育成を目的とした社会還元事業である以上、文化的意義を持った内実のある芝居をかけなくてはならん。またそんな有意義な芝居を選ぶのが支配人の私である。その場限りで面白ければいい。観た後には何も残らない。最近の若者の芝居はみんなそうだよ。」
頭にくる。そしてだめかとため息もつく。
「それはダメということですか。」
支配人も穴があくのは痛い。
「評価されたいのならもっと意識を高く持たなければならないんだ。」
ここで我慢できればいいのに。
「評価するのがあなただったら結構です。」
と本音がでてしまう。

  この後、後悔が重く続く。劇団に帰れず、神戸まで放浪する。
貸すということにすれば、歓喜で飛び上がるのに、そうはさせるかと有川さんの牙がむく。

 この作品のあとがきで有川さんが、「シアター」シリーズは3巻で完結すると書いている。
しかし、3巻目は本にはならない。有川さんの強すぎる個性が出版社の腰をひかせてしまっている氣がする。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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