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堂場瞬一    「異境」(小学館文庫)

 堂場はたくさんの小説を書きすぎ。

主人公の甲斐昭人は大手紙「日報」の本社社会部に勤務していたが、上位者と衝突して、横浜支局社会部に異動させられる。異動して支局に出社した日に、同じ支局の社会部記者二階が、無断欠勤で行方がわからなくなる。この二階も、個人活動がひどく、社会部で浮き上がって、嫌われていた存在。

 3日たっても、二階は現れず、二階の部屋は、荒らされていてもぬけの殻。支局は警察に届けると同時に、特に記者としての仕事がない甲斐に、二階の行方を突き止めるよう指示する。一方警察も部屋の捜索はしたが、二階の行方を調査することはほとんどせず、若い女性刑事浅羽翔子をあてがうのみ。

 この作品、500ページ弱の大長編。ところが、物語の半分まで、失踪の真相に近付くような事象は全くといってよいくらい描かれない。

 何の動きのないミステリーを200ページ以上も読まされるのは本当に辛い。

更に後半、真相に近付く出来事が描かれだす。
しかし、その内容も薄く、一向に緊迫感が無く、盛り上がらない。

結末も、外国人グループが車の窃盗を働き、窃盗車をアジアやロシアに輸出。その際に犯罪を摘発されないように、警察に裏金を渡すという、平凡な内容。

もっと創作頻度を減らし、内容や構成を吟味したうえで、作品を発表したほうがいいのではと思った。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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畠山健二    「本所おけら長屋三」(PHP文芸文庫)

 作家百田尚樹から大絶賛された本作シリーズ三作目。5作品が収録されている。
どの作品も落語の人情噺に、わさびの辛さがピリっと効いたようなくすぐりがあり、本当に面白い作品ばかり。

 大工の為三郎と八五郎が、美人の端唄の師匠に憧れ、けいこに通う話。武家の世子が、家を継ぐのを拒否し、落語家を目指す話など。最後は圧巻、涙と笑いの父娘の再会。それも長屋の大家徳兵衛と娘、菜種問屋の主人木田屋宗右衛門と娘のダブル再会。どれも、泣き笑いが見事に溶け合っている。

 何か言い方があったと思うが、コント55号の萩本欽一がよく使う観客の笑わせかた。
一旦観客を笑わせると、その笑いをしつこく重ねて強調し、笑わせる方法を思い出す。

 端唄を習う八五郎と為三郎。為三郎は怪獣が吠えるような叫び声をあげて歌う。一方八五郎は、とんでもない音痴。

 この二人が彼らの親分文蔵の引退式で、三味線名人の原島富太夫の演奏に合わせて端唄の披露をする。その時の親分の怒りのこもった言いぐさ。

「おう、てめえたち、おれの引退式にケチをつけようってえのか。それも二人揃ってときてやがる。なんだ、その端唄は。酒や料理がまずくなる。子供は泣きだす。爺さんは腰抜かしちまう。婆さんは座りションベンしちまった。俺に喧嘩でも売るきか。」

 重ね落ちが平板に繰り返すのではなく、クレッシェンドのように、だんだんおおげさになり、最後にどっと落とす。さすが演芸作家の畠山だ。

 この作品はシリーズ20巻で完成している。
それで、この作品を読んでビックリしたのだが、ある出来事が起こる、すると注釈が書かれこれは第5巻を、これは第7巻を参照と書いてある。

 読んでいる作品は第3巻である。
ということは、3巻が出版した段階ですでに第5巻、第7巻もできあがっているということになる。これは驚く。こんなことってあり得る?

 待てよ!この作品は文庫の前に単行本で出版されているのかな?それにしても3巻が文庫になるとき、すでに7巻が単行本で出版されたということ。少し信じられない。

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| 古本読書日記 | 07:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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倉知淳   「過ぎ行く風はみどり色」(東京創元社)

 長編ミステリー。単行本1ページ2段組み、細かい字で327ページもある。

冒頭、ややこしいが、登場人物を紹介する。これがないと物語がわからなくなるので。
不動産業と投資で大きなお金を稼いだ方城兵馬。事業を廃業して、世田谷の邸宅に離れを造り生活している。長男の直嗣は40歳を超えて独身。画商をしている。長女の多喜枝は勝行を養子でもらう。夫の勝行は会社員。この子供に長男の成一がいて、兵馬は成一に事業を継がしたかったが、成一は拒否して光学機械メーカーに勤める。さらに多喜枝夫妻には、成一の下に娘美亜が高校生でいる。

 兵馬にはもう一人次女の娘がいたが、交通事故にあい、夫とともに亡くなる。この夫妻に娘左枝子がいる。

 離れに住む、兵馬に霊媒師穴山慈雲斎が取り入り、家に悪霊がとりついているのでこの悪霊を追い払わねばいけない、ついては、自分が取り払ってあげる、更に兵馬の亡くなった妻を降霊させることもしてあげると言う。

 一方、霊媒師はインチキということで、勝行は大学の心理学助手の神代と大内山を招き、兵馬に反対する。

 こんな中で兵馬が何者かに殺される。更に、穴山が、兵馬の依頼により執り行われた降霊会の最中にナイフで刺され殺される。
 この2つの殺人事件の真相解明に、成一の大学先輩、当時何で生計を立てているか不明な猫丸が挑む。

 物語の鍵になるのが、両親を交通事故で亡くし、自らも体が不自由になった左枝子。このため外出はせず、家に閉じこもって暮らしている。

 この左枝子の行動や振る舞いを作者倉知がふんだんに叙述トリックを使い描写する。手足は不自由だが、手すりを使って階段を上り下りをするし、庭にでてベンチに腰掛け過ごすことを楽しむ場面もよく登場する。

 この左枝子が実は全盲であることを、猫丸が指摘。そのことが事件の解明につながる。
左枝子の普段の生活の描写からはとても全盲とは思えないように倉知は描くが、懸命に全盲であることを避けた表現を使って、読者を惑わす。

 叙述トリックに関心のある人にはお勧めの作品である。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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二階堂黎人   「名探偵水乃サトルの大冒険」(講談社文庫)

 すこしおどろおどろしいミステリー5編が収録されている。

第2次世界大戦直前、東京は防衛機能が弱いとして、長野県の松代町に大規模な地下壕を創りその地下壕に首都機能を移転する計画ができあがり、国会の承認を得て工事が開始された。天皇が暮らしている皇居の移転も計画され住居はもちろんビリヤード場建設も予定されていた。しかし、地盤が弱く地下壕の建設は途中で断念。本土決戦のために武器貯蔵庫にすることになった。それが高さ700M弱の皆神山。

 皆神山は日本のピラミッドと言われている。しかし、完成することなく途中で建設が止まる。だから、エジプトなど世界に多くあるピラミッドは頂上が尖り三角錐になっているが、皆神山は台形のようになっている。

 これは確認していないが、この本によると台形の頂上は湖になっているとのこと。軍はこの湖に武器を投げ込み貯蔵したそうだ。

 物語では、夜中この山中で宇宙人を見たという目撃情報が多数でる。武器収集のために、ある宗教団体がダイバーを使い収集していることが明かされる、確かにダイバーの姿は、人間が想像している宇宙人の姿によく似ている。

 物語では、コテージで3人が密室状況で殺害される。もちろん犯人は殺害後逃げ消えている。しかし、殺害部屋は完全密室状態。唯一天窓が数メートルの高さにあり、そこから逃げたのではということ推理されるが、そんな所からヒモをひっかけたらし、それをたぐって天窓までゆきさらにそんな高いところから飛び降りるなど不可能という意見が捜査陣から多数でる。

 ここで名探偵主人公の水乃サトルが登場。
昨夜は地滑りが起こり、コテージは回転してひっくり返った状態になり、天窓が足元に存在し、そこから逃げたと説明する。

 捜査陣がしかしコテージは、天井はてっぺんにある状態で止まっている。

すると、水乃がいう。
「昨夜は2回地滑りがあった。最初の地滑りで、コテージはひっくり返り。2回目の地滑りでさらにもう一回回転して、元にもどったんだ。」と。

 これには私もまいった。しばらく笑いがとまらなかった。
収録されている「空より来たる怪物」より。

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| 古本読書日記 | 05:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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貫井徳郎    「悪の芽」(角川文庫)

 他の人に確かめたことがないから、正しいかどうかわからないが、長い間生きてきて、ふいと思い浮かぶことは、幸せの思い出だろうか、それとも失敗した後悔の思い出だろうか。結構私は、その度ごとに人生でうずき突き上げてくるのは、あれはまずかったなあという後悔の記憶ばかり。

 この作品、斉木という男が、日本最大のコンベンションセンターで開催されたアニメコンベンションの会場で、入場者に無差別に火炎瓶を投げつけ、8人を殺害。そしてその後、自分で火をかぶり自殺する。

 この大量殺害事件の犯人斉木均の名前に接した、主人公の安達。大手銀行の出世街道まっしぐらのエリートサラリーマン。彼は、その名前をみて、犯人が自分の小学校の同級生だったことを思い出す。それと同時に、いつも心にしまってある人生最悪の記憶が蘇ってくる。

 斉木、名前は均でひとしというが、ちょっといやなことを言われたので、均はきんとも読むから、斉木均は「細菌」だね、と言ってしまう。これを、同級生の真壁が斉木均は「バイ菌」だとみんなにいいふらす。

 結果、斉木の配る給食は誰も食べなくなるし、ドッチボールで斉木にあたったボールは誰も拾わなくなり、斉木自身が拾いにゆくようになる。斉木は登校拒否児になり、それは中学卒業まで続く。

 安達は、斉木が小学校をでてからどんな人生を歩んだのかは知らない。しかし、斉木の無差別殺人の原因は自分が作ったのではと悩みだす。そして、それが抑圧になり、パニック障害になる。で、これを克服するには、斉木の今までの人生を調べ、自分の軽率な一言が斉木の殺害者となった要因ではないかと考えるようになる。

 この物語は、安達の懊悩と、その克服の物語かと思った。確かにそれは物語を貫いているが、それは平凡すぎると思っていたところ、後半からはいろんな人たちが登場。そしてその人たちの行動が描かれ、そんな単純な話ではなくなった。

 斉木は就職できず、契約社員でファミレスで働く。そこでの同僚。さらに当時キャバクラに通い。そこのキャバクラ嬢、殺害された人たちの家族、そして斉木の家族など。斉木の人生がめまぐるしく描かれる。

 斉木がキャバ嬢に言ったことが印象に残る。
「人間はまだ進化が十分じゃないんだ。社会的弱者に救いの手をって話になると、自己努力が足りないから、それは自己責任と言い出す人がいる。強い者だけが生き残り、弱い者が死ぬのは仕方ないって考えるのは動物の理屈だ。人間は動物であることをやめて、社会生活を始めたのに。そう、人間はまだ進化の途中。そしてその進化を遂げるには、あと数十万年が必要なんだ。」

 ここを読み、私は深いため息をつく。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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