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若竹七海    「悪いうさぎ」(文春文庫)

 主人公葉村晶は長谷川探偵調査所から依頼を受けて仕事をするフリーの探偵。

家出中の女子高生ミチルを連れ戻す仕事で襲われ大けがをする。その一か月後ミチルの友人美和が行方不明になって、その捜査を依頼される。そして、その捜査の過程で、更に別の女子高生が行方不明になっていることがわかる。

 体裁はミステリーなのだが、女性を主人公にしたハードボイルド小説である。
しかし、一般的ハードボイルド小説の主人公のように強く、独特のニヒルな言葉使いはしない。

 本当に少し気の弱そうな女性主人公。言葉も普通。死ぬことはないのは当たり前なのだが、襲われ簡単に大けがをするし、拉致され、縛られゴミ廃却場に置き去りにされたりもする。
 ハラハラドキドキするし、思わず応援したくなる主人公の造形がすばらしい。

女子高生が失踪する前に、200万円のバイト代のバイトがある。という示唆がさりげなく書かれる。

 200万円のバイト?と読んでいて、どんなバイトだろうと少し本を横において想像してみる。
 売春が思い浮かぶが、いくら女子高生であっても200万円はありえない。何だか見当もつかず、もやもやしながら読み進む。

 このモヤモヤが最後にとんでもない結末となって登場する。
この結末は最初から用意されていたのだろうか。それとも、途中で思いついたのだろうか。

まったく、ぶったまげた最後だ。これはびっくり、そしT正直少し疲れた。

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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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藤沢周平  「三屋清左衛門残日録」(文春文庫)

 連作短編集。

私は、日々淡々と仕事をし、波乱万丈もなく、定年を迎え、退職を迎えた会社人生だった。
まだ、現役だったころ、定年退職した先輩たちの多くが、会社にやってきて、応接室に呼び出され、その後の会社や部門の様子を聞いてしたり顔で評論する。あるいは、一杯やらないかと誘う人もいた。中にはオフィスまで上がってきて、先輩風をふかす人もいた。

 私はそんなみんなに言うほど誇れる業績もなかったので、退職後わずかな人を除いて、現役社員と交わることは無かった。

 主人公の三屋清左衛門は150石の藩主用人係から藩内業務をスタートして順調に出世を重ね最後は270石まで俸給があがり、そこでリタイアして藩内業務を息子に譲り、完全に隠居生活に入った。藩での仕事が無くなり、一日何もすることが無い隠居生活。寂寥感が漂う寂しい生活に入った。

 哀愁漂う隠居生活の描写から物語は始まるが、結局、三屋は城へも出かけるし、現役の藩士も相談が来るし、元同僚や現役の藩士の家へもしょっちゅうでかけるし、藤沢が描くほど孤独では無く、実態は未だに藩に関わって忙しいし、それが生きがいにもなっている。

 清左衛門が元同僚で清左衛門と同様隠居になっている惣兵衛と連れ立って飲みに行く。

宗兵衛が「俺は今、女を囲った」と言う。

 息子夫婦はいやな顔をしたが、毎日ゴロゴロして家にいると、食事を初め掃除や身の回りの世話をしてあげねばならない。ひとたび病気にでもなると世話も大変。半日でもどこかにでかけてくれたほうがありがたいと、妾のところに行くことを容認する。

 そして、惣兵衛は最後のお世話は妾にしてもらうと決めていると言う。
惣兵衛が妾宅に清左衛門を案内する。

 妾はまだ19歳だ。うらやましいだろうと自慢する。
妾は時々機嫌をとる口調で喋るが、そんなにうれしそうにみえない。

 清左衛門は、とても妾が惣兵衛の面倒を最後まで看るとは思えなかった。

こんな関係は金が繋ぐ関係。だけどいつの時代も男はそれがわからない。家族から妾宅に行ってもう戻ってこないでほしいと突き付けられ、みじめになるのがおちだ。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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藤沢周平    「又蔵の火」(文春文庫)

 昭和47,48年にかけて書かれた中編5編を収録。

この時代の少し前からアメリカの映画が変わった。それ以前は長大なスケールで物語が進み、最後、多くはハッピーエンドかアメリカ社会賛歌で終わる作品だった。ところがベトナム戦争が泥沼化し、多くのアメリカ兵が亡くなる。このことがアメリカ社会に暗い影を落とした。

 アメリカ映画は小振りになり、青春映画は、若者の苦悩を表現、恋愛であっても、最後はもうこの先は何もないとばかりに、自殺したり、銃撃や爆撃を受け、死んでしまう作品ばかりになった。日本でも、大手映画会社が斜陽になり、アメリカ文化の影響も受け、ATGなど独立系の小さな映画会社が、アメリカ映画と同じような作品を作った。

 もう若者には将来は無いというニヒルな雰囲気が社会を覆った。

この作品集もそんな社会の雰囲気が反映されている作品ばかりである。

例えば「割れた月」という作品。

手目賭博で捕まり、三宅島に島流しにあった元飾り職人鶴吉。赦免となり江戸に戻される。
誰も出迎えはいない。仕方なく、島流し前に住んでいた長屋に行く。

 そこで、以前は、母お常、妹八重と3人で暮らしていたが、鶴吉がお紺を連れ込んで、母と妹を追い出し、家族との縁が切れてしまっていた。もちろん、鶴吉が訪ねても、家族はおろかお紺もいない完全な空き家。

 その時、隣家の出戻りのお菊にみつかり事情を聞かれる。お菊は結婚したが夫が死に実家へ帰ってきた。小料理屋で住み込み女中をしている。父親は夜泣きそばの屋台を引いている。それに2人の妹がいる。

 お菊は仕事がみつかるまで自分の家にいたらと言い、それに鶴吉は従う。鶴吉はお菊の父親の紹介で左官職人見習いになる。

 ところが突然お菊の父親が倒れ、屋台商売ができなくなる。お菊も父親の介護で料理屋の女中ができなくなる。鶴吉は左官に昼間行い、夜はそばの屋台をひく。ところが、左官の親方が倒れる。昼の仕事が無くなる。それで、もっとお金が稼げる青物屋台売りに転じる

しかし野菜の価格が下がりお金が手にはいらず、どうにもならない状態になる。

 こういう時にでてくるのが昔の賭博仲間。お菊の懸命の制止を振り切って賭博場にゆき、そしてまた手目賭博に手を染める。真っ逆さまにまた地獄に落ちてゆく。

頑張っても、将来は暗すぎ、希望は無い。

 青春時代にたくさん観た映画をまた観たような錯覚に陥った。

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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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アンソロジー   「短編復活」(集英社文庫)

 当代の人気作家16人が創作した短編を収録。
面白かったのは綾辻行人の「特別料理」。

主人公の私は、R大学の文学研究室に勤めている。そこで、その筋では有名な神楽坂のはずれにある「YUI」という店を教えてもらう。その店に妻を誘って食事に行く。
「YUI」看板も無いような隠れ家的店で、小さく「特別料理」と玄関に書かれている。

 そこで本日の特別料理の材料は、ニシキヘビ、スズメの姿焼き、カンガルーの脳みそだったりする。妻はとても無理と言うが、私の強い説得に応じて食する。そして「美味しい」と知りまた来ようねとなる。

 次に来たときは、ゴキブリ入りのカレー、ナメクジ、バッタ、トンボ、オタマジャクシなどを食べる。

 正直、それほど美味というわけではないが、今ヤモリを食べているという生々しい実感、自己陶酔を味わえる。
 こんな感じで何回か「YUI」の特別料理を味わう。
ある日の特別料理、6.5Mもある寄生虫のサナダ虫。これをスパゲッティにみたてた料理を食べる。

 ここでゲテもの、キワものは食いつくしたのではと2人は思う。
 そして、もう食べられるものはないだろうと思って「YUI」に行く。

すると、「本日はとびっきり特別なものを用意しています。保健衛生面での配慮はぬかりありません。伝染性の疾病を持っていたものや、顕著な病的異常が見られた部位―例えば癌化した肝臓などは使用していません。」と人間の部位の料理がだされる。
 さすがに共食いは無理だろうと一瞬思うのだが、それ以上に好奇心が強くなり、結局人肉を食べる。

 そして、もうこれ以上は無いと思いまた「YUI」に行く。すると、本日はまさに圧巻のスペシャルティを用意するとシェフが登場する。
「私もまだ3回しか食べたことが無い。この先、あと食べられても2回でしょう。」と手袋をとる。すると手の指が3本欠けている。

 だんだん、好奇心が嵩じて、恐怖の度合いが高まっていくストーリー作りが卓越している。
うまいと思った。

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| 古本読書日記 | 05:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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藤沢周平    「闇の傀儡師」(下)(文春文庫)

 私の小さい頃、家の蔵の奥に文庫本で立川文庫の本があった。この文庫が面白くて、蔵の中に入って飽きるほど読みふけった。
「猿飛佐助」「水戸黄門」「大久保彦左衛門」「真田十勇士」も全部立川文庫で知った。

 この作品、今でいうとハードボイルドであり伝奇小説である。

今のハードボイルド小説は、ロボットのような人間とは思えない主人公が活躍。敵の放つ銃弾はかするか、決して当たらず、主人公の銃弾は確実に敵にあたる。言葉もきざっぽく、普段しゃべらないような言葉使い。何かゲームをしているような錯覚をおこす作品が多い。

 この物語、主人公の鶴見源次郎は、御家人を捨て、筆耕で糊口をしのぐ貧乏人だし、剣術は卓越はしているが、強靭な性格でもない。

 こんなしがない男が、幕府権力抗争に巻き込まれる。はかない市井の恋もあれば、妖女も登場する。そんな中、謎の反幕グループと鶴見がわたりあう。

面白いし読んでいて懐かしい。この心地よさは何だろうと思う。そいてはたと気が付く。
まさに、子どもの頃に夢中で読んだ立川文庫だと。
間違いなく藤沢周平の時代物の原点は立川文庫にある。

 作品の終盤、謎のグループ「八獄党」と鶴見の甲斐の国での死闘。これぞ、過ぎ去った遠い少年の頃の興奮を思い出させる。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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