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幸田真音   「スケープゴート」(中公文庫)

主人公三崎皓子は51歳東都大学経済学部教授であると同時に新進気鋭のエコノミストで、テレビ番組のコメンテイターでも活躍している。

 戦後ずっと与党として政治を動かしてきた明正党が衆議院選挙で大敗して野党として下野、その結果進志党が政権を奪還、しかし3年半後に進志党が選挙で負け明正党が政権を奪還し、その時、明正党総裁、総理大臣についたのが山城。

 山城は今の安倍首相を彷彿させるが、物語では、政権奪還した時点の年齢が69歳で、かなり安倍首相より年齢が高い。

 皓子に突然総理の山城から面会したいからと電話がはいり、皓子は驚いたが山城に途惑いながら出会う。

 そこで言われたのが金融担当大臣としての入閣を要請される。そこから、皓子の人生が大きく変わり、最後は日本で初めての女性首相に上り詰めるまでを描いた作品である。

 面白いのは、入閣要請の時、最初は断るのだが、最後はすこし考える時間をくれということで、山城と別れる。同意したつもりはないのに、しばらくすると官邸からすぐに官邸にくるようにと電話があり、そのまま金融担当大臣が任命される。

 総理から参院選挙に出馬するよう要請される。選挙区は京都。皓子は京都では問題があり、東京だったら出馬を受諾すると答える。そのまま、総理とは別れる。

 しかし、次に呼ばれたときは、京都出馬は決定していて、選挙参謀、選挙事務所まで決定されている。
 選挙に当選すると、当選祝いをする間もなく、総理に呼び出され、次期組閣で官房長官に任命することを告げられる。無理とか断るとか言う隙がない。

 この手法は何となく今の安倍首相を彷彿とさせる。自分の想いだけで人事を決める。調整という作業は殆ど無い。それに歯向かうようなら、2度と立ち上がれないように排除する。一見、相手の主張を聞くように振舞うが、自分の想いは権力をかさにきて貫く。

 今の日本の借金は1000兆円を超える。少子高齢化が進行し、社会保障制度の維持は誰もが困難と認識しつつある。こんな時にプライマリーバランスを黒字化させるなどということは、とても夢、絵空ごと。

 それで山城総理が国会に上程した法案がびっくり。
年金受給者をインドネシアに移住させる。インドネシアは生活費も安価だから、年金額も半減できる。移住を拒否することもできる。すると、国民保険、介護保険料を倍にする。

 なるほどと思ったり、恐ろしい政策だと私の心も揺れ動く。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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柘植久慶   「震災の生存術」(中公文庫)

 読み始めから、引いてしまった。木造住宅は地震に弱い。築20年以上たった家は、大地震で半壊、倒壊する。しかし、家のローンだって30年から35年が当たり前なのに、ローンを払い終える前に、家をまた新築するか、家を捨てて別のところに移れとか。

 マンションも一階を駐車場にしているマンションは倒壊するから移れとか、窓ガラスにはガラスと一緒に、金網が張られていなければならない。

 もう、ここで、大地震が起きたら半分は死ぬことを覚悟しなくてはならないと思った。実行不能なのである。更に、火事が恐ろしい。少しでも延焼を防ぐため、毎日庭に水を散布しておけと。

 また、家から持ち出す物、あるいは生き抜くためのサバイバルグッズが厳しい。
一週間くらいは、何もない生活が強いられるから、一人30000円、4人家族だったら常に財布に12万円はいれておけ。地震は局地を襲う。少し離れれば、商店は開いている。そこで必要なものを結構購入できるから。(東日本大震災は局地地震ではない)

 サバイバルグッズも凄い。まず3種の道具。手斧、のこぎり、山菜掘り機。それに、市販されているサバイバルグッズ。(救急箱、鍋、ガスコンロ、携帯用ボンベ数個など)それから7日分に対応する食料と水。食料はインスタント食品から缶詰め、チョコレートなど。水は必須。一人一日最低でも3リットル必要。

 更に衣類。風呂にはいれないから、紙製の下着を用意しておく。冬はパーカーや厚手のジャンパー。
 加えて、簡易トイレと簡易テント。更に生活用水。
これを読んだだけでクラクラする。

 そして、地震は家にいるときにくるとは限らない。だから、会社のロッカーにこれらのグッズをいれておけとか、少なくとも3種の道具はいつも携帯しろと。

 通勤途上の電車内で地震がきたとき、電車の椅子が、長椅子形状のときは、すぐみんなでスクラムを組み、脱線した際の大きな揺れに対応しろと。更に電車が脱線したら窓を突き破り脱出。まずは水分が必要だから、飲料水の自販機をさがせ。非常時だから問題ないので、自販機を破壊し、飲み物を取り出せ。でも、自販機ってどうすれば破壊できるの?

 本ではすべての条件を設定して、対応策を提示する。しかし、とてもではないが実施不可能。

 てんこ盛りの対応を紹介してくれるのはありがたいが、まとめとして、せめてこれだけはという対応策の提示が欲しかった。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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山本周五郎  「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」(文春文庫)

文学だけとは限らないが、何かに出会って、それを評価するとき、必ず、その基準となる原点といわれる物がある。沢木にとって文学評価の原点は山本周五郎作品であり、更にその原点は周五郎初期の作品集「日本婦道記」の「松の花」である。直木賞受賞作品となったが、受賞を周五郎が断った作品である。

 周五郎は女性を描くと、たぐいまれな力を発揮した。沢木が編んだ周五郎作品集の初回本はこの「松の花」を含む、女性を主人公にした作品集である。

 半分は既読。どれも珠玉の短編だが、中でも「晩秋」が印象に深く残った。

岡崎藩、御用人である進藤主計は冷酷な人間として評判であった。彼が勤めた20年の間、多くの人たちが罪人として捕まり、極刑を言い渡され、命を落としていった。特に後半の10年間はひどかった。

 進藤の重税策は人々を貧困に追いやる。これを見かねた主人公津留の父は何度となく、進藤に重税を見直すよう上申書をだすが、拒絶され、最後は切腹をさせられた。

 ところが、藩主が変わると、進藤は役を解かれ、江戸詰めとなった。その進藤が屋敷を与えられ藩に極秘に戻ってきた。そして、津留にお側の世話係として屋敷に詰めるよう命令がでた。

 津留は父の仇をうつチャンスがきたと、匕首を懐におさめ屋敷に上がった。その屋敷は寂しかった。食事の世話をする夫婦と、訪問者を取り次ぐ老人の3人しか進藤を除いていなかった。

 津留は進藤を刺す機会を狙っていたが、なかなかその機会は無かった。ある日、食事を世話する時があり、絶好のチャンスと思って、進藤の部屋に津留は出向いたが、ふすま越しに男たちの怒鳴りあいを聞き足を止めた。

 訪問した水野外記が進藤と言い合っていたのだ。
水野は声を荒げて言う。「わたくしには承服できません。あまりにも過酷です。こんな事実はありません。」

 実は、進藤が藩に送り返されたのは、進藤の罪状を調べ、裁きをするためであった。そして、進藤は自ら罪状を書き、自分自身は死刑に値すると裁きの証書を書いていた。その証書に反対する水野と言い合っていたのだ。水野は怒り進藤の屋敷をでる。

 これを聞いて、津留は匕首をそっと外に捨て、お茶を進藤のもとにお茶をさしだす。
進藤が言う。「今日は、匕首を忍ばせていませんね。自分は藩政の立ち行く基盤を造った。しかし、そのために多くの人たちが命を落とした。それは極悪非道の罪に値する。特にあなたの父については切なかった。申し訳なかった。」と。

 津留が進藤に寄りかかった。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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柚月裕子    「朽ちないサクラ」(徳間文庫)

この作品のタイトルにある「サクラ」というのは公安警察の呼び名である。

 物語で、捜査課の梶山課長が、事件の真相と犯人を特定するためには、公安警察が所持している新興宗教集団ソノフの監視対象者リストが必要となる。それで、公安警察の白澤課長にリストの提供を依頼する。

 その時の白澤課長の返答が印象に残る。
「梶さん、あなたたち刑事部の捜査員は、すでにおきた事件の捜査を職務としていますが、われわれ公安は違う。われわれは、これから起きるかもしれない事件を、未然に防ぐことを職務にしているんです。すでに死んでいる人間と、今生きている人間。どちらを守るべきだと思われますか。」

 3人の死者がでる。

一人は女子大生長岡愛梨。ずっとストーカーに付け狙われていて、恐怖を感じ、警察に被害届を両親も含め出していたのだが、警察は受理をずっと渋る。受理をすると捜査をせねばならなくなる。両親が弁護士をたてると極まって言ったために、しぶしぶ受理をするが、受理日を一週間先にしてくれと警察が言う。それから2日後にストーカーにより愛梨さ刺殺される。

 もう一人は、主人公で刑事泉の高校時代の友人で、現在米崎新聞社会部記者をしている津村千佳。実は、警察のストーカー苦情受付をしていて、1週間受理日を先延ばしをした担当の辺見は、この1週間の間に北海道に慰安旅行をしていた。このことを絶対マル秘ということで泉は千佳に伝えていた。その翌日の朝刊に慰安旅行の件が米崎新聞スクープで報道される。
 千佳は、絶対口外していないと泉に言い、おもいつくことがあるので、自分で調査すると次の日から新聞社を休み独自行動をする。その間に川から溺死体となって発見される。

 もう一人は生活安全課でアルバイトをしていた百瀬美咲。警察でアルバイトをしている。通常警察でのアルバイト、5-6年単位で契約が更新され勤務が継続できるのだが、2年で突然解約。それで、地元の実家に帰ったが、近くの森で首つり死体となって発見される。

 この殺人事件の過程で、奇妙だったことは、苦情受付で常に相談者のサイドにたって対応していた辺見が、愛梨の件だけは、冷たい対応に終始していたこと。

 そして、愛梨を殺害したストーカーの赤沢が新興宗教集団ソノフに入信していたところから、事件の背景にソノフが存在していることがわかってくる。

 ところが、ここで公安警察が登場して、捜査を邪魔する。事件の真相を知っている百瀬殺害の犯人を公安のスパイを使い殺害したり、辺見をノイローゼに追いやり警察を辞職させる。

 そして警察の実態は、刑事部捜査課より公安警察のほうが力が強いことが物語では描写される。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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岡田光世   「ニューヨーク日本人教育事情」(岩波新書)

 私が働いていたころ、中高生を持つ父親が海外赴任をすると、受験、進学の妨げになるからと、単身赴任するのが殆どだった。会社も単身赴任の弊害を考慮して、中高生の親はできる限り海外赴任をさせないよう配慮していた。

 この本を読むと、今は様相がかなり変わってきていることがわかり驚いた。日本人の海外駐在が増加するにつれて、主たる海外駐在地に、学習塾や進学予備校が進出し、受験進学の支援をしている。海外に住んでも、全く受験にハンディが無くなり、かつ、外国語を習得でき、将来の就職に有利ということで、家族で海外駐在する人たちが増加しているのだそうだ。

 それにしても、私自身まだ咀嚼できていないのだが、ニューヨークの小学校(アメリカ全土かもしれない)には、gifted programというのがあり、理解が進んでいる生徒と不十分な生徒をクラスわけして教えているのだそうだ。クラスわけするほどの人数がいない場合は同じクラスで、生徒をグループ分けして教える。だからあるグループでは足し算引き算を教えているのだが、別のグループでは√を学んでいるということがある。

 これを肯定すべきなのか、疑問視することなのか、考えがまとまらない。しかしとんでもなく日本とは異なることだけはよくわかる。

 ニューヨークである日本人がアメリカ人から強い叱責を受ける。子どもを殴ったり叩いたりすることはいけない。罪になると。
 そしてそのアメリカ人は子どものお尻の蒙古斑を指さしすごい痣があるという。

口に糸こんにゃくをつけた日本人の子どもをみて、寄生虫検査を受けるようにと言われた母親もいる。やっぱし海外生活は大変だ。

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